月更くる

月更くる

つきふくる

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意味・由来

「月更くる(つきふくる)」は、秋の澄んだ空に昇った月を眺めるうちに、夜が次第に深まっていく情景を表す季語です。単に時刻が遅くなることだけでなく、秋の冴えわたる月光のもと、あたりが静まり返り、冷気が満ちて物寂しさや幽玄な気配が極まっていく時間の推移を捉えています。古来より秋の月は鑑賞の対象とされてきましたが、夜の更けるままに月を愛で、心静かに物思いに耽る日本人の繊細な美意識が込められています。

この季語で詠むコツ

夜が更けるにつれて研ぎ澄まされていく「静けさ」や「微小な音」、そして「肌寒さ」に着目するのがポイントです。昼間の喧騒が消えた深夜だからこそ際立つ、時計の秒針の音、かすかな風のそよぎ、水音や虫の声などを拾い上げると、深閑とした情景が立ち上がります。また、更けゆく月を一人見つめる孤独感や思索といった内面的な気分を、淡々と情景描写に託して詠むと、余韻の深い句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 聴覚を誘う言葉(水音、遠鐘、時計、衣擦れ、虫の声)
  • 静けさや寂しさを宿す言葉(わが影、静寂、冷気、灯を消す、戸口)
  • 屋内・書斎の道具(机、書物、硯、障子、窓)

月更くる」の俳句例 (3件)

月更けていづくの鐘ぞひびく也
与謝蕪村【現代語訳】月が高く昇り夜が更けていく静寂の中、どこからともなく寺の鐘の音が澄み渡って響いてくることだ。 【鑑賞】人気のない深夜、冴えわたる月光が天地を照らす静けさを、遠くから微かに響く鐘の余韻によって鮮やかに際立たせています。音によってかえって深い静寂を描き出す、蕪村ならではの絵画的で幽玄な名句です。
月更けて淋しきものや時計の音
正岡子規【現代語訳】月が更けてあたりが静まり返ると、チクタクと鳴る時計の音がひときわ寂しく感じられるものだ。 【鑑賞】病床にあって秋の夜を過ごす子規の孤独が滲み出ています。澄んだ月光に包まれ、あらゆる音が途絶えた真夜中だからこそ、規則的に時を刻む時計の音が痛切に耳に届きます。日常の身近な音を通じて深い寂寥感を表現した一句です。
月更くる窓をたゝくや桐の風
黒柳召波【現代語訳】月夜がいよいよ更けていくなか、桐の葉を揺らして吹く秋風がことことと窓を叩いている。 【鑑賞】蕪村の高弟として知られる召波の句です。青白い月光が窓辺を照らす深夜、桐の大きな葉を散らすような秋風が窓を揺らしています。視覚的な月の冷たさと、風が窓を叩く微かな音とが響き合い、晩秋の深まりを実感させます。

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