鍋鶴

鍋鶴

なべづる

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意味・由来 鍋鶴(なべづる)は、シベリアや中国北東部から越冬のために日本へ渡ってくる鶴の一種です。頭部から首筋にかけては白いのに対し、胴体や翼はまるで鍋の底についた煤(すす)のように黒ずんだ灰黒色をしていることから、この名が付けられました。その外見から「白頭鶴(はづる)」とも呼ばれます。鹿児島県出水市や山口県周南市八代などが世界的な越冬地として有名で、秋の深まりとともに大群で飛来します。古典的な瑞鳥・白鶴のような優美さとは一味違う、素朴で野生味あふれる風情が特徴の秋の季語です。 ### この季語で詠むコツ 白鶴のような神々しさや優雅さとは異なり、黒みがかった煤色の羽が醸し出す野趣や、哀愁、力強さに着目するのがポイントです。また、単体よりも群れをなして飛来・行動することが多いため、羽音の地鳴りや独特の濁った鳴き声、あるいは大群が空を覆う迫力を捉えると実感がこもります。秋の澄んだ寒気や夕暮れの陰影の中にその黒いシルエットを配置すると、鮮明なコントラストが生まれます。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ 「落日」「夕茜」「干潟」「刈田」「寒風」「羽音」「群る」など、晩秋の広漠とした風景や光と影の陰影を感じさせる言葉と相性が抜群です。

鍋鶴」の俳句例 (3件)

鍋鶴のこゑの重たき落日よ
伊藤敬子【現代語訳】鍋鶴の低く濁った鳴き声が重々しく響きわたる、なんと壮大な夕暮れであることか。【鑑賞】白鶴の甲高い声とは異なる、鍋鶴特有の濁った低い鳴き声を「重たき」と捉え、沈みゆく雄大な夕日と響き合わせました。広大な干潟や越冬地の夕景の厳粛さが胸に迫る秀句です。
鍋鶴の来てゐる風の尖りけり
能村登四郎【現代語訳】鍋鶴が渡ってきている。そのせいか、吹き抜ける風の冷たさが一段と鋭く尖っているように感じられる。【鑑賞】鍋鶴の渡来によって本格的な寒気の到来を肌で感じ取った句。「風の尖りけり」という研ぎ澄まされた触覚の描写が、煤色の鍋鶴の野性味と晩秋の寒冷な気候を見事に象徴しています。
鍋鶴の低き羽音に暮れにけり
阿部みどり女【現代語訳】鍋鶴が低く飛び交う力強い羽音を聞いているうちに、秋の日は静かに暮れていった。【鑑賞】夕暮れの薄暗がりの中、黒っぽい鍋鶴の姿そのものは見えにくくなっても、頭上をかすめる重厚な羽音によってその存在と大自然の営み、そして秋の日の短さを実感させてくれます。

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