苔しのぶ
autumn 生活

苔しのぶ

こけしのぶ

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意味・由来

「苔しのぶ(コケシノブ)」は、山中の湿った岩肌や古い樹木の幹などに着生して群生するシダ植物の一種です。シダでありながら苔のように小さく、葉が薄く半透明で瑞々しい姿が特徴です。夏を耐え、秋の深まりとともにしっとりと潤いを増して青々と茂る風情から、秋の季語として親しまれています。深山幽谷の静けさや、常に水滴に濡れているような清冽で静寂な自然美を象徴する植物です。

この季語で詠むコツ

苔しのぶを詠む際は、その生育環境である「湿気」「岩」「木陰」「水音」などの質感や情景を意識するのがコツです。鮮やかな紅葉などの派手な秋ではなく、静かでひっそりとした深山の秋、あるいは古刹の庭の侘び寂びを表現するのに適しています。水滴が光る様子や、冷ややかな空気感を取り入れることで、植物の繊細な美しさが際立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 自然・水気: 雫(しずく)、滝、巌(いわお)、渓谷、山霧、水音
  • 静寂・場所: 古刹、墓所(奥津城)、苔筵(こけむしろ)、木陰、石段
  • 五感・情緒: 滴る(したたる)、濡るる、冷ややか、幽か(かすか)、青し

苔しのぶ」の俳句例 (3件)

苔しのぶ水滴るや奥津城
村上鬼城【現代語訳】苔しのぶが生えた岩場から清らかな水が滴り落ちており、そこは静寂に包まれた墓所であることだ。 【鑑賞】「奥津城(おくつき)」は神道式の墓所のことです。常に水が滴る湿潤な環境に青々と茂る苔しのぶと、静まり返った聖なる墓所の対比が、厳かで清浄な秋の趣を鮮やかに描き出しています。
苔しのぶ水に落ちたる雫かな
正岡子規【現代語訳】苔しのぶの葉の先から、水面へとぽたりと落ちる一筋の雫であることよ。 【鑑賞】苔しのぶの群生する薄暗い岩場から、透き通った雫が一粒落ちる瞬間をクローズアップした写生句です。落ちる雫の微かな波紋や音が聞こえてくるような、深山の研ぎ澄まされた静けさを感じさせます。
苔しのぶ岩の雫の絶えまなし
松本たかし【現代語訳】苔しのぶがびっしりと覆う岩肌からは、絶え間なく水滴が滴り落ちている。 【鑑賞】岩肌に張り付く苔しのぶの青さと、間断なくしたたり続ける雫の透明感を捉えた一句です。永劫に続くかのような自然の営みと、凛とした秋の冷涼な空気感が簡潔な言葉で表現されています。

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