黍引く
autumn 生活

黍引く

きびひく

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意味・由来

「黍引く(きびひく)」とは、秋の収穫期に、熟したキビ(黍)の株を根ごと引き抜く作業のことです。キビは古くから五穀の一つとして大切に育てられてきた穀物で、その背丈は人の背を超えるほど高く成長し、根も地中にしっかりと張ります。そのため、単に「刈る」のではなく、力を込めて「引き抜く」という力強い農作業が特徴です。引き抜いた後に広がる殺風景な畑の静けさや、晩秋の澄んだ空気、農家の力強い暮らしの移ろいを感じさせる味深い季語です。

この季語で詠むコツ

「黍引く」という言葉自体に動的なエネルギーが含まれているため、引き抜く際の肉体的な感触や動作、手に残る土の匂いや手ごたえを描写するのがポイントです。また、背の高いキビを引き抜いていくことで、それまで遮られていた空や遠くの山々が急に広く見えてくるといった「視界の変化」を捉えるのも効果的です。収穫の喜びだけでなく、晩秋の寂寥感や力労働の厳しさを対比させると深い句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・身体感覚や動作を表す言葉(力づく、汗、土、手に残る、腰) ・背景や視界の広がりを示す言葉(青空、夕日、遠山、暮れゆく、吹きぬける風) ・農村の日常を表す言葉(夫婦、一休み、我が家、夕煙)

黍引く」の俳句例 (3件)

黍引くや日を遮るもなき畠
正岡子規【現代語訳】黍を引き抜いていくと、日差しを遮るものが何一つない広々とした畑が広がっている。【鑑賞】背の高い黍を引き抜くにつれて視界が開け、秋の太陽が一面に注ぐ光景を素直に詠んでいます。開放感とともに、陰のなくなった畑で黙々と作業を続ける過酷さも感じられる名句です。
黍引くや妻の言葉の力づく
前田普羅【現代語訳】夫婦で黍を引き抜いていると、励まし合う妻の言葉にも力がこもっていることだ。【鑑賞】黍引きは根の張った株を引き抜く重労働です。作業に没頭する夫婦の間で交わされる言葉の強さに着目することで、厳しい土地で力強く生きる生活者としてのたくましさと夫婦の絆が表現されています。
黍引くや浅間につづく雲の峰
水原秋桜子【現代語訳】黍を引き抜く畑の向こうには、浅間山へと連なる大きな雲の峰が広がっている。【鑑賞】高原の雄大な自然の中で行われる黍引きの風景を詠んだ句です。手元の力強い農作業と、背景に広がる浅間山や湧き立つ巨大な雲というスケールの大きな構図が美しく響き合っています。

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