毛見の賂ひ
autumn 生活

毛見の賂ひ

けみのまかない

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意味・由来

「毛見(けみ)」とは、江戸時代に領主や代官所の役人が田畑を巡回し、秋の作柄を実際に検査してその年の年貢額を決める行事のことです。そして「毛見の賄ひ(けみのまかない)」は、その調査にやってきた役人たちを、村や農家側が酒食でもてなす(接待する)ことを意味します。年貢の取り決めは農民の死活問題であったため、少しでも手加減をしてもらおうと、農民たちは精一杯の接待や、時には付け届け(賄賂)を贈りました。この季語には、もてなす側の切実な緊張感や経済的な負担、そして役人と農民の化かし合いのような人間味あふれる哀愁が込められています。

この季語で詠むコツ

「毛見の賄ひ」を詠む際は、接待の「裏側にある慌ただしさ」や「心理的な駆け引き」に注目するのがポイントです。豪華なご馳走ではなく、あえて「豆腐」や「大根」といった素朴な食材を配することで、農村の精一杯のやりくりや、もてなす側の心細さが際立ちます。現代のビジネスにおける「接待」や「監査への対応」のような胃の痛むシチュエーションを、この季語に託して見立ててみるのも現代俳句として面白いアプローチになります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 食材・台所まわりの言葉(豆腐、なます、大根、酒一升、膳、箸など)
  • 人の動きや心情を表す言葉(お辞儀、かしこまる、慌ただし、心細し、煤(すす)など)
  • 秋の自然や気配を表す言葉(秋風、嵐、夕日、草の戸、村外れなど)

毛見の賂ひ」の俳句例 (3件)

毛見の日の賄豆腐の四角さよ
与謝蕪村【現代語訳】作柄調査にやってきた役人たちをもてなすご馳走の豆腐が、いかにも四角四面で堅苦しいことだ。 【鑑賞】役人を迎える農民たちの緊張感と、もてなしの席の少しぎこちない空気感を、膳の上に並んだ「四角い豆腐」の形に象徴させてユーモラスに描いた名句です。
けみの日の賄に似る庵かな
小林一茶【現代語訳】私のこのみすぼらしい庵での貧しい暮らしぶりは、まるで毛見(年貢調査)の日の役人に対する、付け焼き刃で簡素な接待のようであることよ。 【鑑賞】自分自身のわび住まいを、毛見の日の慌ただしくも質素な接待の様子に例えて、自嘲的かつ愛嬌たっぷりに表現した一茶らしい視点の句です。
毛見の賄豆腐ばかりのなますかな
正岡子規【現代語訳】役人をもてなすご馳走だというのに、中身は豆腐ばかりが入っているお粗末ななますであることよ。 【鑑賞】お上の役人を接待しなければならないものの、立派な食材を用意できない農村の貧しさと、それでも何とか体裁を整えようと苦心する農民の健気さを、ユーモアと哀感をもって写生しています。

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