風の色
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意味・由来

「風の色」は、本来目に見えないはずの風を、視覚的なイメージとして捉えた美しく情緒豊かな季語です。中国の陰陽五行説において、秋は「白」に対応することから、古来、秋の風は「白風」や「色なき風」とも呼ばれてきました。そこから転じて、秋の訪れとともに大気が澄み渡り、吹き抜ける風がまるで透明な光や独特の色を帯びているかのように感じられる様子を「風の色」と表現するようになりました。単なる視覚だけでなく、肌に触れる涼しさや寂しさ、季節の移り変わりを五感で察知する、日本人の繊細な感性から生まれた言葉です。

この季語で詠むコツ

「風の色」は非常に抽象的で主観的な季語です。そのため、ただ「風の色が美しい」と詠むだけでは、読者にその情景が伝わりづらくなってしまいます。「何によって風の色を感じたのか」という具体的な「モノ」や「光景」と組み合わせることが大切です。例えば、揺れる草木、水面の波紋、空の青さ、人々の表情や装いなど、風が触れて変化した具体的な対象を描写することで、間接的に「風の色」を浮かび上がらせるように詠むと、説得力と深みのある一句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

抽象的な言葉であるため、取り合わせる言葉には、色彩、光、質感、具体的な自然の事物(水、草、空、雲など)がよく合います。

  • 色彩・光を連想させる言葉:「茜」「白」「影」「透き通る」「濁る」
  • 動きや質感を表す言葉:「なびく」「そよぐ」「揺れる」「乾く」「冷ややかなり」
  • 具体的な事物:「水面(みなも)」「野の草」「梢」「雲の切れ間」「窓」

風の色」の俳句例 (3件)

行く秋の川瀬に動く風の色
飯田蛇笏【現代語訳】去りゆく秋の日のこと、きらきらと光る川の浅瀬に、吹き渡る秋風の気配が色となって揺れ動いている。【鑑賞】深まりゆく秋(行く秋)の寂しさと美しさを、川の瀬という具体的な水辺の情景を通して捉えています。水面の細かな波立ちや光の反射の中に、目に見えない風の動きを「色」として捉えた瑞々しい感性が光ります。流れる水と吹き抜ける風が一体となり、季節が移ろいゆく一瞬を鮮やかに切り取っています。
寂しさに何の色をぞ風の色
正岡子規【現代語訳】この身に迫る寂しさは、いったい何色なのだろうか。それはいま吹き抜けていく、この秋の風の色そのものなのだ。【鑑賞】子規は「寂しさ」という目に見えない感情に色があるとするならば、それは目の前を吹き抜ける秋風の色(一般的には「色なき風」、すなわち白や透明、あるいは虚無の色)であると喝破しました。自らの病床での孤独や寂寥感を、秋風という自然の大きな営みに重ね合わせて詠み上げた、心に深く染み入る一句です。
うら枯れて野辺の千草や風の色
与謝蕪村【現代語訳】野原の草花がすっかり枯れ果てている。その荒涼とした野辺に吹き抜けていく風は、まさにわびしく寂しい秋の色を帯びていることだ。【鑑賞】「うら枯れ」は秋から冬にかけて草木の葉が枯れること。色鮮やかだった千草が色あせていく寂しい風景の中で、蕪村は吹き渡る風そのものに寂寥の色(色なき色、あるいは枯れ色)を見出しています。視覚的な衰えと、体感としての秋風が見事に融合した、絵画的な美しさと哀愁が漂う名句です。

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