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「蚕(かいこ)」は、絹糸を生み出すカイコガの幼虫のことです。日本では古くから「お蚕様」と尊称で呼ばれるほど、人々の生活と深く結びつき、大切に育てられてきました。春になると蚕種(卵)から幼虫が孵化し、新鮮な桑の葉を勢いよく食べて成長していきます。俳句において単に「蚕」や「蚕飼(こかい)」と言う場合、生命の息吹と養蚕の営みが始まる「春」の季語となります。
蚕を詠む際は、その独特な「音」や「白さ」、そして「人の暮らしの気配」に目を向けるのがコツです。蚕が一斉に桑の葉を食む音は、よく「春の静かな雨の音」に例えられます。薄暗い室内で命がひしめく気配や、かつて日本各地の農家で見られた、家族総出で蚕を慈しむ温かな情景を描き出すと、実感のこもった味わい深い句になります。
・桑の葉(春に青々と芽吹く、蚕の主食) ・蚕籠(蚕を育てるための平たい竹籠) ・莚(むしろ:作業用や敷物として用いられる道具) ・夜、雨、微かな音(静けさの中で際立つ食餌の音の描写) ・掌、指先、母(人の手で育てる温もりを伝える言葉)