稲熱田

稲熱田

いもちだ

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意味・由来

「稲熱田(いもちだ)」とは、稲の重要病害である「いもち病(稲熱病)」に侵された田んぼのことです。「いもち」は稲が熱病に侵されたように葉や穂が赤褐色や灰白色に変色し、立ち枯れてしまう糸状菌(カビ)による病害です。冷夏や長雨、日照不足などの天候不順によって多発し、収穫に甚大な打撃を与えるため、古くから農家にとって最も恐れられてきた災害の一つでした。秋の豊かな実りとは対照的な、荒涼としたもの悲しさや農作業の労苦、天候へのやるせなさが滲む晩秋の季語です。

この季語で詠むコツ

「実りの秋」の華やかさとは真逆の、赤茶けて衰弱した田の情景や、それを見つめる人の哀切を描き出すのがポイントです。単に病気の稲を説明するのではなく、夕暮れの光や冷たい秋風、立ち込める湿気や曇天の空といった「重苦しい空気感」を五感を使って表現すると、季語の持つ憂いと深みがぐっと引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚・光景:夕日、薄暮、暮色、曇天、赤茶色、立ち枯れ ・触覚・気象:冷風、湿気、長雨、やませ、冷気 ・情緒・心情:立ち尽くす、無気力、憂ひ、静まり返る、見舞ふ

稲熱田」の俳句例 (3件)

稲熱田のほのぼの赤き日暮かな
長谷川素逝【現代語訳】いもち病にかかった田が、夕暮れの光の中でほんのりと赤く浮かび上がっていることよ。 【鑑賞】病気で変色した稲の赤茶けた色と、沈みゆく夕日の淡い光が重なり合い、切なくも静謐な美しさを醸し出しています。「ほのぼの」という柔らかな表現が、かえってやるせない哀愁を際立たせています。
稲熱田のくれゆく風に立ちつくす
木下夕爾【現代語訳】病に冒された稲の田に、日が暮れて吹き抜ける冷たい風を受けながら、ただ呆然と立ち尽くしている。 【鑑賞】丹精込めて育てた稲が無情にも枯れていく様を前にして、言葉を失い立ち尽くす人物の心情が痛切に伝わってきます。暮色と風の冷たさが、農の厳しさと深い失意を際立たせています。
稲熱田に夕日さしそふ無気力さ
石田波郷【現代語訳】病んで枯れかけた田に夕日が差し重なり、どうすることもできない無気力感に包まれる。 【鑑賞】病んだ田を容赦なく照らし出す夕日の赤さと、人間の力では抗えない自然の猛威に対する脱力感が直截に詠まれています。自身の病苦と重ね合わせたかのような、波郷らしい厳しく内省的なまなざしが宿っています。

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