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季語 (20)

なづな

spring

なづな

意味・由来\n「なづな(薺)」は、アブラナ科の越年草で、春の七草の一つとしても親しまれています。別名「ペンペングサ」や「シャミセングサ」とも呼ばれ、実の形が三味線の撥(ばち)に似ていることからこの名があります。春になると、道端や空き地、畑の隅などに、小さく愛らしい白い花をたくさん咲かせます。どこにでも生えているありふれた雑草ですが、それゆえに私たちの生活に最も身近な春の訪れを告げる植物として、古くから愛されてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\nなづなは、バラや桜のような華やかさはありません。そのため、詠む際には「小ささ」「ひそやかさ」「どこにでもある日常」に注目するのがコツです。目線をぐっと下げて、地面に近い視点から観察することで、なづなならではの素朴な美しさや愛らしさを引き出すことができます。また、風に揺れてかすかに音を立てるような、聴覚的なイメージを取り入れるのも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\nなづなは日常の風景によく溶け込むため、以下のような素朴で生活感のある言葉と相性が良いです。\n- 地形・場所:路地、垣根、道端、空き地、日向(ひなた)\n- 日常・生活:犬の散歩、足元、錆びた自転車、土手\n- 状態・五感:揺れる、かすか、白、のどか

spring

うめ

意味・由来 梅は、バラ科の落葉高木で、早春の寒さの中でいち早く花を咲かせることから「百花の魁(さきがけ)」と称されます。中国から渡来したとされ、万葉集の時代には桜よりも梅のほうが愛でられていました。厳しい寒さに耐えて咲く姿は、高潔さや忍耐の象徴としても重んじられてきました。現代でも、春の訪れをいち早く告げる代表的な季語として、多くの人々に親しまれています。 この季語で詠むコツ 梅は桜と違って、一斉に華やかに咲き誇るというよりは、寒さのなかで一輪一輪が凛として咲く姿が特徴です。そのため、視覚的な美しさだけでなく、寒風の中に漂う「香り(匂い)」や、ゴツゴツとした幹の「力強さ(古木)」に注目すると、より梅らしさが引き立ちます。また、白梅の「白」や紅梅の「紅」といった色彩の対比も、句を詠む際の良いアクセントになります。近寄って一輪を見つめる視点と、遠くから梅林を望む視点を意識して使い分けると良いでしょう。 相性のいい言葉・取り合わせ 嗅覚や五感に訴えかける言葉(「香り」「こぼれる」「微風」「風の音」) 寒さと温かさの対比を表す言葉(「残雪」「日差し」「日和」「朝の冷気」) 質感や歴史を感じさせる言葉(「古木」「苔」「垣根」「庵(いおり)」「山路」)

木の葉かつ散る

autumn

このはかつちる

意味・由来 「木の葉かつ散る(このはかつちる)」は、晩秋の季語です。「かつ」とは「一方では~しながら、他方では~する」「次から次へと」という意味を持つ古語副詞です。すなわち、一枚の葉がハラハラと落ちるそばから、また次の葉が散りこぼれ、絶え間なく舞い散る情景を表しています。『古今和歌集』の「秋風の吹きにし日より音羽山峰の梢も色づきにけり/かつ散るを見れば」などの古典和歌の美意識を色濃く受け継いでおり、深まる秋の哀愁や無常感を格調高く詠み込むことができる季語です。 この季語で詠むコツ 「かつ」という言葉自体に「連続する動き」や「時間の経過」が含まれているため、単なる散り際だけでなく、光の移ろいや風の気配、音の変化などを意識すると詩情がぐっと深まります。散る葉の種類(欅・銀杏・桜など)を限定せず、「木の葉」として大きく捉えることで、山全体や庭全体の広い空間の寂寥感を表現するのに適しています。中七や下五には、静けさや人の心情を重ねる叙情的な描写を合わせると調和します。 相性のいい言葉・取り合わせ 静寂・場所を表す言葉:古寺、薬師堂、石段、山門、日陰、日表(ひおもて) 時間・光の移ろい:夕日、薄日、暮色、ひるさがり、影 動作・感情:歩みをとどむ、見上ぐ、ひとり、寂けさ、無常

花園

autumn

はなぞの

意味・由来 「花園(はなぞの)」は、現代の感覚では春の百花繚乱の光景を連想しがちですが、俳句の世界では伝統的に「秋」の季語とされています。古来、和歌や俳諧において春の花といえば桜を単独で指すのに対し、秋は「秋の七草」をはじめ萩、女郎花、桔梗、菊、撫子など多彩な草花が咲き乱れることから、それらの咲く庭や野を「花園」「花畑」と呼んで愛でてきました。絢爛豪華というよりは、秋風にそよぐ楚々とした風情や、澄んだ大気の中でしっとりと色を競い合う風雅な佇まいを指す季語です。 この季語で詠むコツ 秋の花園ならではの「落ち着き」や「季節の移ろい」を捉えるのがポイントです。日中の明るい日差しだけでなく、夕暮れの斜光、そぞろ寒さを感じる秋風、草花に置く朝露など、光や風の描写を取り合わせることで秋の実感がぐっと深まります。また、花の美しさそのものに目を奪われるだけでなく、そこに訪れる昆虫の衰えや、やがて枯れゆく草花の命の儚さに焦点を当てると、味わい深い余情を醸し出すことができます。 相性のいい言葉・取り合わせ 天候・光:「秋晴(あきばれ)」「夕日」「秋日和」「斜陽」 風・水:「秋風」「野分(のわけ)」「白露(しらつゆ)」「秋の水」 生物:「赤とんぼ」「老いたる蝶」「虫の音」 動作・情景:「訪ねゆく」「佇む」「小径(こみち)」「寺社」

西郷忌

autumn

さいごうき

意味・由来\n「西郷忌(さいごうき)」は、明治維新の立役者でありながら西南戦争で敗れ、明治10年(1877年)9月24日に鹿児島・城山で自刃した西郷隆盛(南洲)を偲ぶ秋の季語です。「南洲忌(なんしゅうき)」とも呼ばれます。西郷はその豪放磊落で温厚な人柄、そして悲劇的な最期から、今なお多くの人々に敬愛されています。澄み渡る秋空や初秋の物寂しさと、英雄の悲壮な散り際が重なり合い、深い哀惜と歴史の重みを感じさせる季語です。\n\n### この季語で詠むコツ\n歴史的な人物の忌日であるため、単に追悼の意を述べるだけでなく、西郷隆盛の雄大さや包容力、あるいは散り際の哀愁を季語に託して詠むのがポイントです。鹿児島(薩摩)の風土や城山、桜島などの具体的な地名・自然景観と取り合わせると、雄大さと哀惜の対比が際立ちます。また、銅像を見上げたときの心理や、秋晴の空の広大さを西郷の人柄に重ねるアプローチも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 地名・名所:桜島、城山、薩摩、上野(西郷像)\n- 自然・風景:秋雲、秋風、噴煙、青野、夕焼、白雲\n- 心情・情景:巨星、無言、大空、見上ぐる、悠々

桜紅葉

autumn

さくらもみじ

意味・由来 「桜紅葉(さくらもみじ)」とは、秋になって桜の葉が赤や黄色、橙色に色づく様子、またその紅葉した葉そのものを指す季語です(仲秋から晩秋の季語)。 春の主役として誰もが注目する桜の花に対し、秋の桜はひっそりと色づき、楓(かえで)などの紅葉よりも一足早く散り始めます。鮮やかな赤だけでなく、褐色や黄色が混ざり合った独特の渋みと温かみのある色合いが特徴で、春の華やかさの記憶と対比されることで、移ろいゆく季節の儚さや哀愁を強く感じさせます。 この季語で詠むコツ 桜紅葉を詠む際は、楓のような「燃えるような鮮烈さ」ではなく、「落ち着いた静けさ」「色あせゆく儚さ」「春の面影との対比」に目を向けるのがコツです。 桜の葉は虫食いや縮れがあることも多く、そうした不完全な美しさや、はらはらと散り敷く風情を写生することで、しみじみとした情感が生まれます。また、光の当たり方(夕日や木漏れ日)や、地面・水面に散った姿を描くのも効果的です。 相性のいい言葉・取り合わせ ・光や影:「夕日」「木漏れ日」「日暮れ」「朝影」 ・地面や水辺:「石段」「古道」「水面」「土手」「ベンチ」 ・情景・動作:「散り敷く」「踏みゆく」「拾い上ぐ」「風の音」

蘭草

autumn

らんそう

意味・由来 「蘭草(らんそう)」は、秋の七草の一つである「フジバカマ(藤袴)」の漢名であり、別名です。キク科の多年草で、秋に淡い紫色の小さな花を房状に咲かせます。古くから日本人に親しまれてきた植物で、生のときにはほとんど香りがありませんが、刈り取って乾燥させると、桜の葉に似た上品な芳香(クマリンという成分によるもの)を放つのが大きな特徴です。このため、平安時代など古くは衣類に香りを移す香料として、あるいは防虫剤として書物に挟むなど、雅びで実用的な「香草」として珍重されてきました。 この季語で詠むコツ 蘭草を詠む際は、淡い紫色の可憐な花そのものを写生するだけでなく、最大の特徴である「香り」や「歴史的な情緒」に着目するのがコツです。乾燥させることで初めて匂い立つという性質を活かして、暮らしの中の丁寧な手仕事や、静かな時間経過を表現すると深みが増します。また、風にそよぐ姿や、かすかな風情を五感で捉えるように詠むと良いでしょう。 相性のいい言葉・取り合わせ 香りと衣服: 香(かおり)、袂(たもと)、衣擦れ、匂い袋 書物と静寂: 古書、文(ふみ)、紐解く、机、書斎 自然の動き: 風、雨、夕暮れ、日向、干す、刈る

豇豆飯

autumn

ささげめし

意味・由来 「豇豆飯(ささげめし)」とは、ササゲの豆を混ぜて炊き込んだご飯のことです。秋の収穫期に作られる季節の家庭料理であり、小豆(あずき)を入れた赤飯によく似ています。小豆は煮ると皮が破れやすく「切腹」を連想させるため、特に江戸の武家社会では皮が破れにくいササゲが重宝され、祝儀の赤飯として定着しました。秋の季語として詠まれる場合、新穀と新豆の収穫を祝う素朴な喜びや、どこか懐かしい家庭の温もりを感じさせる風情があります。 この季語で詠むコツ 炊きたてのほのかな赤紫色、立ち上る香ばしい湯気、口に含んだときの豆のほっくりとした食感など、五感(視覚・嗅覚・味覚)を具体的に捉えるのがポイントです。また、晴れの日のお祝いという側面だけでなく、庶民のつつましい夕餉(ゆうげ)の温もりや、郷愁、家族の絆を表現する素材としても非常に効果的です。 相性のいい言葉・取り合わせ ・視覚や香りを表す言葉(湯気、桜色、炊き立つ、ふくよか、渋み) ・食卓や暮らしの情景(夕餉、茶碗、塗り箸、古妻、母の手、香の物) ・秋の季節感(夕日、秋風、新米、豊作、夜長)

猿の腰掛

autumn

さるのこしかけ

意味・由来\n「猿の腰掛(さるのこしかけ)」は、サルノコシカケ科などの多孔菌類(きのこ)の総称で、秋の季語です。梅や桜、ブナ、杉などの老木や枯れ木、倒木の幹に半円形の棚状(傘状)に自生します。木質のように非常に硬く、まるで小さな猿がちょこんと腰掛けるのにぴったりの形をしていることからこのユーモラスな名が付けられました。\n\n### この季語で詠むコツ\n猿の腰掛は、色鮮やかな秋の紅葉とは対照的に、鬱蒼とした深山や苔むした古木など、静寂や年月を感じさせる場所に似合います。単に形の珍しさを描写するだけでなく、それが生えている大樹の生命力や朽ちてゆく哀愁、森の湿り気や木漏れ日といった周囲の空間や時間の経過を意識して取り合わせると、奥行きのある句になります。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 自然・環境: 「古木」「倒木」「苔」「深山」「山霧」「木漏れ日」「しじま」\n- 時間・質感: 「幾年」「固き」「重なりて」「風雨」「朽ちゆく」\n- 動詞: 「抱く」「生ひ立つ」「耐ふる」「ならぶ」

草の初花

autumn

くさのはつはな

意味・由来 「草の初花(くさのはつはな)」とは、秋の訪れとともに野山や庭先に咲き始める、秋の草花の「その年最初の一輪」あるいは「咲き始め」を指す季語です。一般に「初花」とだけ言うと春の桜の咲き始めを指しますが、頭に「草の」と付けることで、萩や撫子、桔梗といった秋の野草の咲き初めを表現します。厳しい夏が過ぎ、涼やかな秋の風が吹き始める頃、足元にそっと咲く小さな花に季節の移ろいを感じ取る、日本人の細やかな感性から生まれた言葉です。 この季語で詠むコツ この季語を詠む際は、華やかさではなく「ひそやかさ」「はかなさ」「発見の喜び」に焦点を当てるのがコツです。周囲の草木がまだ青々としている中で、ぽつんと咲いた一輪の小ささに気づく驚きや、季節の変わり目の新鮮な感動を瑞々しく表現しましょう。初々しい生命の輝きをすくい取るように描写することが大切です。 相性のいい言葉・取り合わせ ・露(朝露、こぼるる露) ・風(秋の風、そよ風) ・光(夕日、朝日の光) ・足元、野道、庭の隅、ひそかに

狂い花

winter

くるいばな

意味・由来\n「狂い花(くるいばな)」とは、春や秋など、本来の開花時期とは異なる冬の時期に、季節外れに咲いてしまった花のことを指します。主に桜、桃、躑躅(つつじ)、梨などの木に見られます。同義語として「返り花(かえりばな)」や「返り咲き(かえりざき)」などがあります。晩秋から冬にかけての穏やかで温かい小春日和に誘われ、植物が季節を勘違いして咲かせてしまうこの現象は、人々に驚きを与えると同時に、やがて来る厳しい寒さに晒される命のはかなさを感じさせます。\n\n### この季語で詠むコツ\n狂い花を詠む際には、単に「季節外れの花が咲いている」という珍しさを報告するだけではなく、周囲の「冬枯れた景色」や「冷たい空気」との対比(コントラスト)を意識することが重要です。周囲が生命力を失っていく冬の荒涼とした背景の中に、ぽつんと咲く一輪の色彩を描き出すことで、その花の健気さや孤独感、そして哀愁がよりいっそう際立ちます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・光や温もりを表す言葉(日差し、小春、日和、日あたり)\n・はかなさや静けさを表す言葉(一輪、ひっそり、影、風、こぼるる)\n・冬の寒冷な背景を表す言葉(冬枯れ、寒風、枯れ枝、霜、空)

秋桜

autumn

あきざくら

意味・由来 メキシコ原産のキク科の一年草。明治時代に日本に渡来し、秋の桜と書くように、日本の秋の風景に欠かせない花となりました。白、ピンク、紅などの可憐な花が風に揺れる様子は秋の風情を感じさせます。 この季語で詠むコツ コスモスは群生して風に揺れる様子や、澄んだ秋空との対比が美しい季語です。明治以降の新しい花であるため、古風な表現よりも現代的な生活感や明るい風景とよく合います。風に揺れるひたむきさや、色とりどりの可憐な姿を素直に写生すると、清々しい句になります。 相性のいい言葉・取り合わせ 天候・風景:秋晴、野道、風 生活・動作:自転車、散歩、ベンチ 色彩・状態:揺れる、ピンク、群生 傍題 コスモス(こすもす)

開帳

spring

かいちょう

意味・由来 「開帳(かいちょう)」は、普段は固く扉が閉ざされている寺院の秘仏や本尊を、特定の期間だけ特別に公開して人々が参拝できるようにする仏教行事です。特に春に多く行われることから、春の季語となっています。江戸時代には、特定の寺院での「居開帳」だけでなく、他所へ仏像を出張させて公開する「出開帳」が盛んになり、現代の博覧会やイベントのような一大レジャーとして大変な賑わいを見せました。春のうららかな陽気と相まって、人々が浮き立つような明るさと、信仰の厳かさが同居する季語です。 この季語で詠むコツ 開帳を詠む際は、お堂の中の厳かな雰囲気と、お堂の外の春爛漫な景色との「対比」を意識すると効果的です。また、久方ぶりに姿を現した仏様の尊顔やその歴史を感じさせる様子をクローズアップして描くか、あるいは開帳に集まる群衆の活気や、道中ののどかな風景といった「周囲の様子」を描くかによって、句の個性が分かれます。五感(線香の香り、暗いお堂と外の光の明暗など)を刺激する表現を取り入れるのもおすすめです。 相性のいい言葉・取り合わせ 堂内の様子・五感:「煤(すす)」「金泥(こんでい)」「線香の煙」「うす暗き」 参拝の様子:「人波」「賽銭」「数珠(じゅず)」「親子連れ」 春の光景:「春風」「うららか」「桜」「青空」

金平桜

spring

こんぺいざくら

意味・由来 「金平桜(こんぺいざくら)」は、春に咲く八重桜の一種です。江戸時代に一世を風靡した人形浄瑠璃「金平浄瑠璃」の主人公、坂田金平(さかたのきんぴら)に由来します。坂田金平は、あの金太郎こと坂田金時の息子とされ、怪力無双の豪傑として知られています。その名が示す通り、金平桜は非常に肉厚で大きな花弁を持ち、がっしりとした力強い枝ぶりが特徴です。一般的な桜の持つ儚げな美しさとは異なり、野生味あふれるダイナミックな姿が、江戸の人々に「金平」の豪快さを連想させ、この名で親しまれるようになりました。 この季語で詠むコツ 金平桜を詠む際は、桜の「繊細さ」や「薄命さ」を表現するのではなく、むしろ「力強さ」「武骨さ」「生命力の豊かさ」に焦点を当てることが重要です。咲き誇る花のボリューム感、風に負けないたくましい枝、あるいは「金平」というキャラクターが持つ豪傑なイメージを投影することで、この季語が持つ独特の個性を引き出すことができます。あえて荒々しい動的な表現や、少しユーモラスな視点を取り入れると、瑞々しい句に仕上がります。 相性のいい言葉・取り合わせ 力強さや動きを表す言葉: 荒仕事、みなぎる、へし折る、吹きちる、頑丈、太枝 対照的な静寂や武骨な情景: 関所、古寺、岩肌、鎧、夕日、野武士 荒々しさと対比させる静かな言葉: 散る、眠る、おさまる、煙る

西翁忌

spring

さいおうき

意味・由来 「西翁忌(さいおうき)」は、平安時代末期の歌人であり僧侶でもあった西行(さいぎょう)法師の忌日(陰暦2月15日、新暦では3月末頃)を指す春の季語です。西行は「願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ」という有名な歌を残し、その言葉通りに釈迦の入滅の日である2月15日の翌日(2月16日)に遷化しました。このため、2月15日を西行の忌日とし、親しみを込めて「西翁(さいおう)忌」や「西行忌(さいぎょうき)」と呼び、その風雅な生涯を偲びます。 この季語で詠むコツ 西翁忌を詠む際は、西行が終生愛した「桜(花)」や「月」、そして「旅」や「漂泊」といったモチーフを取り合わせるのが王道です。うららかな春の情景の中に、どこか世捨て人のような静寂さや、人生の無常観、哀愁を漂わせることで、忌日俳句としての深みが増します。現代の生活に引き寄せる場合も、旅情や静かな内省の時間と結びつけると詠みやすくなります。 相性のいい言葉・取り合わせ 花、山桜、落花、花曇り 望月、春の月、おぼろ月 旅衣、杖、草枕、遍路 風の音、水音、庵、静けさ

花野

autumn

はなの

意味・由来 「花野(はなの)」とは、秋の草花が一面に咲き乱れている野原を指す季語です。俳句で単に「花」といえば春の桜を指しますが、「花野」となると秋の季語になります。萩や尾花(ススキ)、女郎花(おみなえし)、撫子(なでしこ)といった「秋の七草」をはじめ、野菊や釣鐘草などの多様な草花が、風に吹かれてそよぐ情景を表します。春の花畑のような鮮烈な華やかさとは異なり、どこか澄んだ静けさや、やがて枯れゆく季節の移ろい、ほのかな寂寥感を内包しているのが特徴です。 この季語で詠むコツ 個々の草花の名前をあれこれ並べるのではなく、「花野」という大きな広がり全体を一つのキャンバスとして捉えるのがポイントです。秋の澄んだ陽ざしや渡る風の気配、あるいはそこに身を置く自分自身の身体感覚(歩く足裏の感覚、衣の擦れる音、風を全身に受ける感覚など)に焦点を当てると臨場感が生まれます。また、広大な花野の中に佇む小さな人物や遠くの山並みを取り合わせることで、景に奥行きを持たせることができます。 相性のいい言葉・取り合わせ 動詞・動作:「迷ふ」「分け入る」「佇つ」「行く」「見失ふ」 自然・天候:「夕風」「秋光(しゅうこう)」「薄日」「夕日」「茜空」「風の道」 情景・人:「小道」「帽子」「旅人」「影」「遠山」

栗咲く

summer

くりさく

意味・由来\n「栗咲く(くりさく)」は、初夏(仲夏)に栗の木が黄白色の細長いブラシのような花を咲かせる様子を表す季語です。栗の花は、桜のような華やかさはありませんが、独特の強い青臭い香りを放ち、山野や里山を白く染め上げます。この力強く、かつどこか泥臭い生命力と独特の匂いが、古くから季節の移り変わりを実感させる象徴として親しまれてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\n「栗咲く」を詠む際は、視覚的な「白さ」や「群れて咲く様子」だけでなく、その「独特の強い香り(匂い)」や、梅雨時の「湿った空気感」に焦点を当てると効果的です。また、華やかな花ではないからこそ、素朴な日常や静かな山里の暮らしと組み合わせることで、深い味わいが生まれます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n 嗅覚・空気感:匂い、むせぶ、雨、曇り空、湿気\n 生活・風景:山路、畑、夕暮れ、庵、家路

花の塵

spring

はなのちり

意味・由来 「花の塵(はなのちり)」は、晩春の季語です。美しく咲き誇った桜の花が散り、地面や水面、あるいは建物の隅などに、まるで塵(ちり)のように積もっている様子を指します。また、風に吹かれて塵のように激しく舞う散り際の花びらそのものを表すこともあります。咲いている時の華やかさとは対照的に、散った後の哀愁や無常観、しかしどこか美しさを残す余韻を捉えた、非常に日本的な美意識に基づく季語です。 この季語で詠むコツ 「花の塵」を詠む際は、ただの「汚いゴミ」として扱うのではなく、かつて美しく咲いていた桜の面影(余韻)をどのように表現するかがポイントです。掃除をする日常の仕草、風に吹き寄せられる様子、光の当たり方などを具体的に描写することで、寂しさの中にある詩情や、生から死への移ろいといった無常観を表現することができます。 相性のいい言葉・取り合わせ 散り際やその後の様子を描くため、静かで少し寂しげな言葉とよく合います。「夕暮れ」「掃く」「水たまり」「風」「お堂」「石畳」など、時間経過や場所を示す言葉との相性が抜群です。また、日常の生活感をあえてぶつけることで、対比の美しさを引き出すこともできます。

花野原

autumn

はなのはら

意味・由来\n「花野原(はなのはら)」は、秋のさまざまな草花が一面に咲き乱れている野原を指す秋の季語です。「花野(はなの)」とも呼ばれます。春の「花」が主に桜を指すのに対し、秋の野に咲く花は萩、薄(すすき)、桔梗、女郎花(おみなえし)など多種多様で、楚々とした風情や哀愁を漂わせるのが特徴です。広大な野原に色とりどりの小花が風に揺れる光景は、どこか寂しげでありながらも華やかで、古くから日本人に愛されてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\n単に「草花がたくさん咲いている」という景色の説明にとどまらず、空間の広がりや光、風の動きを意識して詠むのがコツです。夕暮れの斜光、吹き抜ける秋風の冷たさ、遠くに見える山並みなどを捉えることで、花野原のスケール感や移ろいゆく季節の寂寥感が引き立ちます。また、野原の中に一本だけ伸びる小道や、そこを歩く自分自身の心情を取り合わせるのも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・光や風を表す言葉(夕日、秋風、茜空、そよぎ、澄む)\n・空間や動きを表す言葉(道、一本道、遥か、迷ふ、行き交ふ)\n・情緒を深める言葉(寂けさ、旅人、暮色、影)

spring

はる

意味〱由来 。春〃づ、元々だっけ億い億い儲いて、万物が生き生きと活動を始める季節を指す三春(初春〱仲春〱晩春)の大季誮です。宦の上では立春(2月4日頃)から立夏(5月6日頃)の前日までを指します。雪解け、暖かな光、新芽の芽吹きなど、生命の喜びと希望に満ちた季節は、古来より数多くの歌や俣句に詠まれてきました。 この季誮で詠むコツ 。春〃という言葉は非常に範囲が広いため、単に「春が来た」と詠むだけでは抽象的になりがちです。五感(暖かはな風の感触、梅や桜の香り、鳥のさえずりのど)を意識し、目の前にある具体的な景色の変化を捉えることが大切です。。春〃という言葉自体が持つ明るさや、どこか物憂げな雰囲気を、自分の感情と重ね合わせてみましょう。 相性のいい言葉〱取り合わせ 動きを表す言葉(「立つ」「来る」「行く」など)や、光や風を表す言葉(「光」「風」「うらら」など)と相性が良いです。また。春の雨」「春の海」のように他の名詞と結びついて一迣きの季誮になることが多く、日常のささやかな変化や、旅立ちの情感などと取り合わせることで、より深い詩情が生まれます。

俳人 (3)

俳句 (20)

水鳥の 胸に分けて行く 桜哉

年々や 桜を肥やす 花の塵

春の夜は 桜に明けて 仕舞ひけり

桜散る 苗代水や 星月夜

木のもとに 汁も膾も 桜かな

狂ひ咲く桜や僧の世をいとふ

金平の桜はちるか関の寺

金平の桜や風の荒仕事

金平の桜を折るやうでの骨

社燕や神路の風にちる桜

桜島煙を絶たず西郷忌

桜島見ゆる限りの西郷忌

桜茸山気いよいよ深きかな

桜茸傘ひろげたる落葉かな

桜茸谷の静けさに生ひ立ちて

水洟や桜紅葉に日暮れけり

桜紅葉石段のぼるたびに踏む

桜紅葉散りつくしたる日和かな

隆盛忌桜島より風立ちて

南洲忌城山暮るる桜島