月の剣

月の剣

つきのつるぎ

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意味・由来

「月の剣(つきのつるぎ)」は、秋の澄み渡る夜空に浮かぶ鋭い三日月や繊月(せんげつ)を、研ぎ澄まされた白刃・刀剣に見立てた優美で張り詰めた趣のある季語です。「月剣(げっけん)」とも称されます。新月を過ぎて間もない陰暦八月三日頃の月は極めて細く、研ぎ澄まされた刃のような弧を描きます。古来、秋は乾燥して大気中の塵が少なく月光がひときわ鋭敏で冷ややかに感じられることから、夜空にきらめく細い月を「抜き身の宝剣」になぞらえる独特の美意識が生まれました。

この季語で詠むコツ

「月の剣」自体が非常に鮮烈で硬質な比喩を含んでいるため、月そのものをさらに大げさに修飾すると理屈っぽく重くなってしまいます。刀や刃を連想させる言葉を重ねすぎず、冷え冷えとした夜気や地上の静けさと対比させることが成功の秘訣です。月の鋭い光が地上をどのように照らし、何を際立たせているのか、空気の冷たさや静寂といった五感の情報を丁寧に取り合わせることで、格調高い緊張感と詩情を生み出すことができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・自然・天象:「雲」「夜気」「秋風」「星」「夜空」 ・地上の情景:「芒(すすき)」「露」「水面」「梢」「影」「岩」 ・状態・感覚を表す言葉:「澄む」「冴ゆ」「研ぐ」「冷やか」「凛と」

月の剣」の俳句例 (3件)

月の剣雲の鞘より出でにけり
正岡子規【現代語訳】鋭い名刀のような三日月が、雲という鞘からすらりと抜け出て、冴えた光を放った。 【鑑賞】三日月を研ぎ澄まされた白刃に、それを隠していた一筋の雲を「鞘」に見立てた見事な名句です。秋の澄み切った夜空の冷徹な美しさが、まるで名刀を一気に抜き放った瞬間のような緊張感とともに鮮烈に描き出されています。
月の剣鞘に納まる気色なし
内藤鳴雪【現代語訳】鋭い光を放つ三日月は、まるで抜身の刀のようで、鞘に納まる気配など少しもなく冷ややかに輝き続けている。 【鑑賞】秋の夜の張り詰めた空気と、決して鈍ることのない月の鋭利な光覚を「鞘に納まる気色なし」と豪快かつ引き締まった調子で詠み切っています。鳴雪らしい骨太な気迫と、秋の夜の冷徹さが響き合う一句です。
月の剣抜いて露散る芒かな
正岡子規【現代語訳】夜空に月の剣が抜き放たれた刹那、その切っ先の気迫に打たれたかのように、芒から露がはらはらと散りこぼれた。 【鑑賞】頭上の鋭い三日月(天)と、地上の芒と露(地)が見事な照応を見せています。天上の白刃の気迫が地上に波及し、露が一粒こぼれ落ちる動意を捉えたことで、静寂の中に研ぎ澄まされたドラマを生み出しています。

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