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「蚕卵紙(たねがみ・さんらんし)」とは、蚕(かいこ)の卵をびっしりと産み付けた専用の厚紙のことです。春先にこの紙を適温に保ち、卵を孵化(ふか)させて養蚕が始まります。無数に並んだ微小な卵粒には、これから始まる豊かな命の営みが凝縮されています。かつて養蚕が盛んだった日本の農村では、家族総出でこの紙を大切に扱い、春の訪れとともに新たな命を迎える神聖な道具でもありました。春の季語として、静けさの中に満ちる生命力や、人の手と自然が交わる温もりを象徴します。
蚕卵紙を詠む際は、視覚的な細やかさや触覚的な温もりを描き出すのがコツです。びっしりと並ぶ卵の粒の規則正しさや微細な凹凸、孵化を促すために紙を温める人の気配、あるいは大切に保管されている薄暗い蔵の静けさなどに着目してみましょう。小さな命への畏敬や慈しみの心を添えると、情景に深い奥行きが生まれます。
・微温(ぬくもり/微かな温かさ) ・薄日、春光(春の光) ・蔵、紙包み、指先(無季の生活・動作の言葉) ・息吹、兆し(命の始まりを表す言葉)