たぶの実

たぶの実

たぶのみ

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意味・由来

「たぶの実」は、クスノキ科の常緑高木であるタブノキ(椨の木)が初秋につける果実のことです。タブノキは暖かい沿岸地や神社の境内(社叢)などに多く自生し、時に神木として何百年もの樹齢を誇る巨木になります。夏から秋にかけて直径1センチほどの球形の実がつき、熟すと黒紫色になります。果柄(実を支える軸)が赤色を帯びて反り返る特徴があり、実の黒紫色との対比も鮮やかです。熟した実が社寺の屋根や敷石、地面にポトポトと音を立てて落ちる様子は、秋の訪れと静寂を深く感じさせます。

この季語で詠むコツ

たぶの実は、その「落ちる音」や「落ちて広がる様子」など、聴覚や動きに焦点を当てて詠まれることが多い季語です。また、タブノキ自体が古い寺社や屋敷林に多く見られるため、どこか厳かで静まり返った場所の情景とよく調和します。単に木を見上げるのではなく、地面に転がる実の質感や、踏まれたときの青い匂い、野鳥がついばみに集まる気配など、五感を開いて描写すると、深まりゆく秋の気配を立体的に捉えることができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・場所・空間:境内、社(やしろ)、石段、古井戸、屋根、瓦、土間 ・動作・状態:落ちる、ひびく、転がる、鎮まる、跳ねる、散らばる ・自然・生き物:海風、木漏れ日、野鳥、鴉(からす)、鳩、小波

たぶの実」の俳句例 (3件)

たぶの實の落ちて鎮まる海蔵寺
皆吉爽雨【現代語訳】タブノキの実が音を立てて落ち、その後いっそう静けさが深まる海蔵寺であることよ。 【鑑賞】鎌倉の名刹・海蔵寺の秋の風情を詠んだ一句です。ポトリと実が落ちたその一瞬の響きが、かえって寺の境内の深い静寂を際立たせています。「落ちて鎮まる」という措辞に、静から動、そして再び静へと移ろう禅寺の澄んだ時間が凝縮されています。
たぶの実の落ちては水の輪をひろぐ
水原秋櫻子【現代語訳】タブノキの実が池の水面に落ちては、きれいな波紋の輪を広げている。 【鑑賞】水辺に枝を伸ばすタブノキから、熟した実が水面にぽとりと落ちる瞬間を捉えています。次々に広がる水の輪が目に浮かぶようで、秋の日の穏やかで透明感のある時間の流れが、清澄な調べに乗せて美しく表現されています。
たぶの実の落ちつゞけたる日暮かな
角川源義【現代語訳】タブノキの実が絶え間なく落ち続けているうちに、いつの間にか暮れてゆく秋の夕方であるよ。 【鑑賞】木の下に身を置いていると、静かな空間に時折ポトリ、ポトリと実の落ちる音が響きます。その単調な音の連続のうちに秋の短い一日が暮れてゆく、しみじみとした孤独感と季節の深まりを情緒豊かに描き出した名句です。

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