薄孕む

薄孕む

すすきはらむ

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意味・由来

「薄孕む(すすきはらむ)」とは、初秋の頃、ススキがまだ穂を出さず、茎の葉鞘(ようしょう)の中でふくらんでいる状態を指す季語です。植物が蕾や穂を抱えてふくらむ様子を「孕む(胎内に子をやどす)」と見立てた、日本人の繊細な観察眼と生命への慈しみが込められた美しい言葉です。秋風に白く揺れる尾花(おばな)の華やかさとは異なり、まさにこれから秋が深まろうとする前触れや、内に秘めた静かな生命の胎動を感じさせます。

この季語で詠むコツ

穂が出てしまえば「薄(すすき)」や「花薄」となりますので、「薄孕む」を使う際は、まだ穂が開いていない青々しさや、茎のふくらみそのものに焦点を当てることが大切です。「内に力を蓄えている静寂」「かすかな秋の気配」「まだ夏の余韻が残る野山の風」などを意識すると、季語の持つ情感を存分に生かせます。派手な情景描写よりも、ふと足元や野原に目を留めたときの細やかな発見を詠むのに適しています。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚・触覚の言葉(緑、青し、露、夕日、重たし、しなふ) ・場所や空間を表す言葉(野道、堤、山裾、畦、空) ・動きや風情を表す言葉(風の一筋、兆す、ひそまる、待つ)

薄孕む」の俳句例 (3件)

薄孕む風の行衛を見届けず
加藤楸邨【現代語訳】穂を孕んだ薄の原を吹き抜けていく風の行方を、最後まで見届けることもなく立ち去った。 【鑑賞】穂を出す前のススキを揺らして吹き去っていく秋初めの風。その風がどこへ去っていくのかを見届けることなく歩みを進める作者の、内省的でどこか乾いた詩心が表現されています。ふくらむススキの静けさと吹き抜ける風の動勢が鮮やかな対比をなしています。
薄孕む風にまかせて立ち止る
星野立子【現代語訳】穂を孕んだ薄を揺らす風の吹くままに、ふと足を止めた。 【鑑賞】野道を歩いていて、ふと吹き抜けた心地よい秋風に誘われるように立ち止まった瞬間の句です。まだ穂を出していないススキのふくらみに秋の訪れを感じ取り、自然の息吹に身を委ねる作者の素直でみずみずしい感性が光ります。
薄孕む野の夕風の立ちそめし
高浜年尾【現代語訳】穂を孕んだ薄が一面に広がる野原に、夕暮れの風が静かに吹き始めた。 【鑑賞】夏の暑さが引いた夕暮れ時、出穂を待つススキの野に涼やかな風が吹き始める情景です。これから深まりゆく秋への予感を広大な野の風景とともに捉えており、澄んだ夕空と草の香りが漂ってくるような大らかな一句です。

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