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「去る田鶴(さるたづ)」とは、冬を日本の暖地や干拓地などで過ごした鶴が、春の訪れとともに北方の繁殖地へと帰っていく情景を指す春の季語です。「田鶴」は鶴の古風で雅やかな呼び名であり、万葉集や古今和歌集といった古典和歌の時代から水辺の情景とともに親しまれてきました。ただ「鶴が帰る」と言うよりも、雅びな響きを持つ「田鶴」を用いることで、水田を離れゆく姿や、去りゆく季節に対する名残惜しさがより深く滲み出る言葉です。
鶴が群れをなして上昇気流に乗り、北の空へと遠ざかっていく「動的な視線」を意識して詠むのがポイントです。水田を飛び立つ瞬間の力強さ、互いに呼び交わす甲高い鳴き声、あるいは春の光や霞のなかに消えていく影などを具体的に描写すると効果的です。「去る田鶴」という言葉そのものに豊かな詩情と切なさが備わっているため、感情を直接言い表すのではなく、広大な空や風の気配など周囲の情景を静かに重ね合わせると、奥行きのある一句になります。
・春霞(はるがすみ) ・北天(ほくてん)/北の空 ・雲路(くもじ) ・水田(みずた) ・茜(あかね) ・鳴き交はす(なきかわす) ・風のぼる(かぜのぼる)