名吉

名吉

なよし

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意味・由来 「名吉(なよし)」とは、出世魚として知られるボラ(鯔)の幼魚・若魚を指す秋の季語です。ボラは成長段階や地方によってオボコ、スバシリ、イナ、ボラ、トドなど呼び名が変わりますが、体長20〜30センチメートル前後の若魚を関西などを中心に「名吉」と呼びならわしてきました。秋になると汽水域や河口、入江などに大群で押し寄せ、身に脂が乗って美味となります。どこかめでたく雅味のある「名吉」という呼び名が古くから俳諧で愛され、秋の水辺の情景を象徴する季語として定着しました。 ### この季語で詠むコツ 名吉は水面から勢いよくジャンプする習性があるため、水面を跳ねる動的な瞬間や、その跳躍によって広がる同心円の水輪を捉えるのが定番の詠み方です。また、成魚の「鯔」に比べると若々しく小ぶりであるため、軽快さや親しみやすさを意識すると名吉らしさが際立ちます。日暮れ時の河口や潮の満ち引き、川添いの風情など、夕暮れの水辺の情景と結びつけるとしっとりとした秋の寂寥感や抒情を豊かに表現できます。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ 水辺の環境を表す「河口」「入江」「夕潮」「引き潮」「川風」「澪標(みおつくし)」などの言葉と好相性です。また、名吉の跳躍や漁の様子を表す「跳ねる」「とぶ」「水輪」「投網」「網代」「釣る」などの動詞や、水面の光を捉える「夕日」「落日」「夕茜」といった光の描写を取り合わせると、叙情的な情景を鮮明に立ち上げることができます。

名吉」の俳句例 (3件)

名吉釣る老がうしろや秋の風
正岡子規【現代語訳】川辺で一心に名吉を釣っている老人の後ろ姿に、もの悲しい秋の風が吹き抜けていく。【鑑賞】名吉釣りに夢中になっている老人の背中と、そこを通り抜ける秋風を客観的に捉えた写生句です。老人の枯淡な佇まいと秋の気配が重なり合い、名吉という魚の持つ庶民的な親しみやすさと秋の哀愁がじんわりと心に染み入ります。
名吉とぶや汐干の名残夕日影
内藤丈草【現代語訳】潮が引いたあとの干潟の入江に、名吉が勢いよく跳ねている。そこへ傾いた秋の夕日が美しく斜めに差している。【鑑賞】引き潮の残る河口や浜辺の夕暮れを、名吉の鋭い跳躍とともに切り取った名句です。沈みゆく夕日の光と水しぶきの一瞬のきらめきが鮮やかで、静けさの中に生き生きとした生命のリズムが感じられます。
名吉とぶや汐引潟の秋の風
各務支考【現代語訳】潮が引き始めた干潟の海面で名吉が銀の腹を見せて跳ね、その上を涼やかな秋の風が吹き渡っていく。【鑑賞】潮の満ち引きと名吉の動き、そして肌をなでる秋風の感触が美しく調和しています。水辺の広がりと澄んだ秋の空気感が五感を通じて伝わってくる、芭蕉の高弟・支考らしい端正な景情一致の句です。

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