稲負鳥

稲負鳥

いなおおせどり・いなおせどり

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意味・由来

「稲負鳥(いなおおせどり/いなおせどり)」は、秋の田んぼに現れ、まるで稲穂を背負っているかのように見える鳥のことです。『万葉集』にも詠まれた非常に古い鳥の名で、実体はセキレイ(鶺鴒)やシトド(鵐)、あるいはクイナなど諸説ありますが、特定の鳥というよりも「稲の実りを告げる詩情あふれる鳥」として古くから愛されてきました。実りの秋の豊かさと、どこか神話的でノスタルジックな情景を想起させる秋の季語です。

この季語で詠むコツ

鳥そのものの姿を詳細に描写するよりも、黄金色に波打つ田んぼや、稲刈り前後の田園風景全体の空気感と重ね合わせるのがポイントです。夕暮れの光、刈田の匂い、遠く聞こえる農作業の音など、五感を刺激する風景の中に「稲負鳥」を配することで、絵画的で奥行きのある一句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 風景・場所: 刈田(かりた)、稲架(はざ)、畦道(あぜみち)、夕靄(ゆうもや)、里山
  • 時間・光: 夕日、黄昏、茜空、朝霧、薄暮
  • 動詞・様子: 飛び立つ、渡る、暮れ行く、かそけき、遥か

稲負鳥」の俳句例 (3件)

稲負鳥いつをむかしに田歌かな
向井去来【現代語訳】稲負鳥が飛ぶこの田園で、田歌が歌われていたのはいつの昔のことなのだろうか。 【鑑賞】『万葉集』の古歌にも登場する「稲負鳥」という言葉から、古代の農耕の営みや田歌に思いを馳せた名句です。目の前の豊かな秋の風景に歴史の重なりを感じさせます。
稲負鳥鳴くや暮れ行く田の面より
野沢浪化【現代語訳】日が暮れてゆく田んぼのあたりから、稲負鳥の鳴き声が聞こえてくる。 【鑑賞】夕暮れ時の田園に響く鳥の声をとらえた情緒豊かな句です。静かに暮れゆく秋の一日の切なさと、収穫期の満ち足りた気配が見事に調和しています。
稲負鳥稲負ふて飛ぶ姿かな
高浜虚子【現代語訳】稲負鳥が、その名の通り本当に稲を背負って飛んでいるかのような姿であることよ。 【鑑賞】鳥の古雅な名前の面白さに着目し、実景と結びつけて平明かつユーモラスに詠み下した句です。素朴ながらも秋の田園の伸びやかな実感が伝わります。

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