稗刈

稗刈

ひえかり

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意味・由来

「稗刈(ひえかり)」は、雑穀の一種である「稗(ヒエ)」を秋に刈り取って収穫することを指す秋の季語です。稗は冷涼な気候や痩せた土地にも強く、古くから稲の育ちにくい山間地や寒冷地での主食、あるいは飢饉に備える救荒作物として大切に栽培されてきました。稲刈りに先立って行われることが多く、黄金色に波打つ華やかな稲田に比べ、小粒で素朴な穂を刈る作業には、厳しい自然と向き合いながら暮らす山里の生活感や哀歓が色濃く漂います。

この季語で詠むコツ

稲刈りのような明るく豊饒な祝祭感とは対照的に、どこか渋く素朴で、少し寂しげな風情を意識して詠むと「稗刈」らしさが引き立ちます。痩せ地や傾斜地にある畑、夕暮れの傾く日差し、肌を刺し始める秋冷の風といった情景を取り入れると、厳しい風土に生きる人々のたくましさや生活の重みが伝わりやすくなります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・風物・光景:夕日、夕風、朝露、菅笠、山畑、段々畑、背負籠 ・自然・天候:秋晴、夕立雲、山影、薄暮、初霜の気配 ・心情・動作:黙々、急ぐ、束ねる、日暮れ、汗、親の面影

稗刈」の俳句例 (3件)

稗刈やほろほろ落つる朝の露
加舎白雄【現代語訳】稗を刈り取っていると、穂先から朝露がほろほろとこぼれ落ちてくる。【鑑賞】早朝の清冽な空気の中、黙々と稗を刈る素朴な農の情景です。「ほろほろ」という柔らかな擬態語により、朝露の儚い美しさと周囲の静寂、そして朝早くから畑に出る作業の清々しさが繊細に表現されています。
稗刈の笠に音あり夕立雲
正岡子規【現代語訳】稗を刈る農夫の笠にポツポツと大粒の雨音が響く。見上げれば空一面に夕立雲が広がっている。【鑑賞】作業中の笠に当たる雨音という聴覚から、空の不穏な夕立雲へと視線を転じる構成が見事です。秋の変わりやすい山の天気と、雨に追われながら収穫を急ぐ農作業の緊張感がリアルに伝わってきます。
稗刈や親に似てくる日の光
前田普羅【現代語訳】稗刈りに精を出す自分に降り注ぐ秋の日差しは、かつて同じようにこの土地で汗を流していた親の温もりに似ている。【鑑賞】貧しい土地を耕し、稗を刈り取ってきた先祖や親の労苦と、その土地を受け継いで作業する己の血脈のつながりを、秋の優しい日差しの中に感じ取った深い情感が溢れる名句です。

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