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「筆を試む(ふでをこころむ)」とは、新年を迎えて初めて筆を執り、文字や絵、詩歌などをしたためることを指す新年の季語です。一般的には正月二日に行われる「書き初め」や「筆始(ふではじめ)」と同義ですが、「試む」という言葉には、筆の滑り具合や墨の濃淡を確かめつつ、新年の澄み切った心で最初の一画を踏み出すような、初々しい緊張感と風流な趣が宿っています。平安時代の宮中行事であった「吉書初め(きっしょはじめ)」に由来し、江戸時代以降に庶民の間にも広く定着しました。
単に「書道をした」という事実を述べるにとどまらず、新しい年の静謐な空気感や、真っ白な紙に向き合うときの心の引き締まりを捉えるのがポイントです。たとえば、硯(すずり)に若水を注いで墨を磨る音、立ち上る清々しい墨の香り、紙に触れる穂先の柔らかさといった「五感」を意識すると、情景が鮮やかに立ち上がります。何を書いたかという結果よりも、筆を握る手元の緊張や、部屋に差し込む初日の光など、書く前後の静かな所作や周囲の気配を取り合わせると味わい深い句になります。
・書道具や動作にまつわる言葉(青硯、若水、墨の香、白き紙、穂先、すり流す) ・新年の光や空気(初明かり、初光、静寂、澄む、背筋) ・心情や所作を表す言葉(息を詰め、ためらひ、心改まり、座を正し)