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季語 (20)

小菊

autumn

こぎく

意味・由来 小菊(こぎく)は、秋の深まりとともに咲く径3センチメートル以下の小ぶりな菊の総称です。大輪の菊(大菊)が菊花展などで格式高く、鑑賞用として人工的な美を極めるのに対し、小菊は民家の庭先や畑の隅、道端などに群がり咲き、親しみやすく素朴な風情を持っています。白、黄、紫、紅など色とりどりに咲き乱れ、晩秋の寒さがつのるころまで長く咲き続けるため、冬近き日の温もりを感じさせる花として古くから愛されてきました。 この季語で詠むコツ 大菊のような「気品」「豪壮さ」とは対照的に、小菊が持つ「身近さ」「素朴さ」「たくましさ」に着目するのがポイントです。整然と咲く姿よりも、こぼれるように咲き誇るボリューム感や、日当たりの良い庭の片隅、素朴な竹垣など、日々の暮らしの風景と結びつけると情感が深まります。また、晩秋の澄んだ日差しや、冷たい風との対比を描くことで、可憐な花の生命力が際立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ 生活・場所:庭先、垣根、手水鉢、縁側、小道、日向 視覚・色彩:黄、白、紫、こぼるる、群れて、咲き乱る 季節・気候:秋うらら、日差し、小春日、そぞろ寒、薄霜

木の葉衣

autumn

このはごろも

意味・由来 「木の葉衣(このはごろも)」とは、落ち葉や木の葉をつづり合わせて作った衣服のことです。古代中国の仙人や、深山に隠遁した高僧・隠者が身にまとったとされる伝説的な装束に由来します。俳諧においては、実際に木の葉で作った服を指すだけでなく、晩秋の山中などで体に降りかかる落ち葉を衣服に見立てたり、世俗を離れて暮らす人の清貧で風雅な暮らしぶり、あるいはそうした隠者への憧れを象徴する雅趣あふれる季語として親しまれています。 この季語で詠むコツ 「木の葉衣」は物語性や幻想味を帯びた言葉です。単なる情景描写にとどまらず、深山の静寂や、わび・さびの情緒、冬を間近に控えた晩秋の孤独感を漂わせると効果的です。山寺、隠れ家、落ち葉が降りしきる様子、肌を刺すような冷たい雨や風などと響き合わせることで、詩的な深みがぐっと増します。 相性のいい言葉・取り合わせ 自然・天候:時雨(しぐれ)、初霜、木枯らし、松の露、夕暮れ 場所・道具:山寺、柴の庵、苔の庭、針、糸、竹杖 心情・風情:隠遁(いんとん)、閑寂、ひとり、染まる、縫ふ

朝月夜

autumn

あさづくよ・あさづきよ

意味・由来\n「朝月夜(あさづくよ/あさづきよ)」とは、夜が明けてもなお空に残っている月の光、あるいはその月が照らす明け方の情景を指す秋の季語です。\n陰暦十六夜(いざよい)以降の月は夜遅くに出て明け方に沈むため、空が白み始めても西の空に残ります。古くは万葉集の時代から和歌に詠まれてきた情緒ある言葉で、秋特有の澄み切った冷気と、淡く残る月の光が相まって、静寂と哀愁を感じさせます。\n\n### この季語で詠むコツ\n朝月夜の魅力は、「夜から朝へと移り変わる瞬間の静けさと冷涼感」にあります。単に月を見上げるだけでなく、夜明け前の薄明るい光の中で浮かび上がる周囲の景色や、目覚めゆく人・自然の気配と組み合わせるのがポイントです。\n秋の訪れによる肌寒さ(朝寒、露など)や、消え入りそうな月の淡い白さに焦点を当てると、情感豊かな一句になります。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 自然・気象:朝露、薄霜、霧、朝風、白む空、冷気\n- 情景・動作:旅立ち、旅人、戸を開く、寝覚め、影、水引草、雁の竿\n- 感覚:淡し、かすか、覚めぎわ、静けさ、ひやり

小紅鶸

autumn

こべにひわ

意味・由来 「小紅鶸(こべにひわ)」は、スズメ目アトリ科に属する小鳥で、秋から初冬にかけてシベリアなど北方から日本へ渡ってくる冬鳥・旅鳥です。名前に「紅」とある通り、頭頂部に鮮やかな紅色の斑紋があり、胸元にもほんのり赤みを帯びています。近縁の「紅鶸(べにひわ)」よりも全体的に白っぽく、体長も12センチ前後とひとまわり小型なのが特徴です。落葉広葉樹林や白樺林、ハンノキなどの梢に群れて実をついばむ姿が見られ、深まりゆく秋や冬の到来を知らせる愛らしい季語として親しまれています。 この季語で詠むコツ 小紅鶸を詠む際は、その小さく敏捷な動きや、群れで枝先を飛び交う軽やかさを写し取ることがポイントです。細い枝に逆さまにぶら下がって木の実を食べる様子や、頭の紅色と冬枯れに向かう自然の色彩の対比を描くと情景が鮮明になります。北から渡ってきた鳥ならではの寒々とした風や澄んだ空気感、静寂の中に響く羽音や微かな鳴き声を捉えると、命の温もりと季節の寂寥感が引き立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ 自然・植物:白樺、ハンノキ、梢(こずえ)、木の実、霧、初霜、雑木林 天候・風景:秋風、薄日、秋気、山霧、北風、静けさ 動作・状態:群る、ついばむ、飛び交ふ、こぼるる、枝しなる

黄連雀

autumn

きれんじゃく

意味・由来 「黄連雀(きれんじゃく)」は、スズメ目レンジャク科に分類される渡り鳥です。秋から冬にかけてシベリア方面から日本へ群れをなして渡来します。頭部にある美しい冠羽(かんう)が特徴で、尾羽の先端が鮮やかな黄色であることからこの名がつきました。同属の「緋連雀(ひれんじゃく)」とともに、枝に一列に「連なる」ように並んで止まる習性があり、これが「連雀」という名の由来にもなっています。秋の深まりとともに、ヤドリギやナナカマドなどの木の実を求めて賑やかに梢を渡り歩く姿は、山野の季節の移り変わりを告げる象徴的な光景です。 この季語で詠むコツ 黄連雀を詠む際は、その「色彩の美しさ」と「群れとしてのダイナミックな動き」に着目するのがポイントです。尾羽の黄色や、彼らが好む木の実の赤や紫など、鮮やかな色彩のコントラストを描き出すことで、絵画的な美しさが生まれます。また、一斉に飛び立ち、梢を揺らすといった生命感溢れる一瞬の動作を鋭く切り取ることで、静まり返る秋の自然との対比が際立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ 色彩を際立たせる言葉: 「朱(あけ)の木の実」「碧空(へきくう)」「霜枯れ」「薄日」 動きや音を連想させる言葉: 「梢(こずえ)を揺らす」「こぼるる」「一陣の風」「群れ立つ」 晩秋の情景: 「朝霧」「冷気」「落葉」「山風」

霜降の節

autumn

そうこうのせつ

意味・由来 「霜降の節(そうこうのせつ)」は、二十四節気の一つで、現在の太陽暦では10月23日頃にあたります。秋の最後の節気であり、露が冷気によって結晶化し、大地に霜が降り始める頃を意味します。朝晩の冷え込みがいっそう厳しくなり、木々の紅葉が深まり、冬の訪れを間近に感じる晩秋の深まりを表す季語です。 ### この季語で詠むコツ 単に「寒い」と述べるのではなく、朝のキリッとした冷気や、草木・屋根にうっすらと白く宿る霜の気配、澄み渡る秋の空など、視覚や皮膚感覚を具体的に描写するのがコツです。秋から冬への移ろい、去りゆく秋を惜しむ気分(惜秋)を込めることで、情緒豊かな一句になります。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ 朝、日ざし、湯煙、水鳥、枯野、屋根瓦、足音、吐く息、静寂など、深まる冷気と光の対比を感じさせる言葉と好相性です。

autumn

さけ

意味・由来 「鮏(さけ)」は、秋に産卵のために海から生まれ故郷の川へと遡上してくるサケ(白鮭)を指す秋の季語です。「鮭」とも書きます。北国の川を一心不乱に遡る姿は「秋味(あきあじ)」とも呼ばれ、古くから日本の秋を代表する命の営み、また豊かな秋の味覚として親しまれてきました。なお、冬に加工・保存される「新巻鮭」や「塩鮭」は冬の季語となりますが、生きた魚としての鮭や遡上する姿、獲れたての鮭を指す場合は秋の季語として扱われます。 この季語で詠むコツ 鮏の持つ「生命の力強さ」「自然の循環」「北国の冷たい水勢」を意識して詠むのがポイントです。激流や浅瀬を懸命に飛び跳ねる躍動感を描くこともできれば、命を燃やし尽くそうとする哀愁や凄みを表現することもできます。また、漁場や市場の活気、旬の食膳としての滋味に焦点を当てるのも親しみやすいアプローチです。 相性のいい言葉・取り合わせ ・水や流れの描写:「瀬音」「濁流」「浅瀬」「しぶき」「激流」 ・北国の風土:「越後」「北上川」「みちのく」「初霜」「紅葉」 ・色や光:「白き水」「夕日」「月影」「銀鱗」

鮭場

autumn

さけば

意味・由来 「鮭場(さけば)」とは、秋に産卵のために海から川へと遡上してくる鮭を捕獲するために設けられた漁場、またはその作業場のことです。主に北海道や東北、北陸などの寒冷地の河川に見られ、川を柵や網で遮る仕掛け(簗・ウライ)の周辺や、獲れた鮭の水揚げ・処理を行う小屋などを含めて指します。冷たい水しぶきの中で命がけで川を遡る鮭と、それを受け止める人々の活気や厳しさが入り混じる、晩秋の北国ならではの風情を持つ季語です。 この季語で詠むコツ 「鮭場」を詠む際は、場所が持つ独特の空気感・臨場感を捉えるのがポイントです。川の激しい水音、立ち込める水煙や川霧、水揚げ作業の威勢のいい掛け声、あるいは夕暮れの作業小屋に灯る明かりなど、視覚や聴覚、触覚(寒さ)を刺激する具体物を配すると生き生きとした句になります。北国の厳しい自然と、そこに生きる人々のたくましさや生活のぬくもりを対比させるのも効果的です。 相性のいい言葉・取り合わせ ・水や自然の情景:川音、水煙、川霧、濁流、夕日、月影、初霜 ・作業や生活の情景:かがり火、電燈、長靴、投網、掛け声、番小屋 ・感覚を表す言葉:冷たし、昏る(くる)、轟く、しぶく、あたたか

砂糖大根

autumn

さとうだいこん

意味・由来 砂糖大根(さとうだいこん)は「甜菜(てんさい)」や「ビート」とも呼ばれるヒユ科の根菜で、砂糖の原料となる重要な農作物です。大根に似た白く太い根にたっぷりと糖分を蓄え、日本では主に北海道などの冷涼な地域で大規模に栽培されています。秋の深まりとともに一斉に収穫され、畑一面に山積みにされたり、製糖工場へ運ばれたりする光景は、北国の大地に冬の足音が迫る秋の力強い風物詩となっています。 この季語で詠むコツ 砂糖大根を詠む際は、広大な大地で繰り広げられる収穫の迫力や、北国ならではの澄んだ空気・寒冷な風土を意識するのがポイントです。掘り出されたばかりの土の匂い、積み上げられた白い塊の量感、運搬するトラックや貨車の響きなど、視覚や触覚・聴覚を具体的に捉えることで、生活感と季節の深まりが鮮やかに伝わります。 相性のいい言葉・取り合わせ 風土・場所:北海道、十勝、北の大地、野道、貨物駅 作業・情景:掘り起す、積み上ぐ、土煙、積荷、夕暮れ 季節感・天候:冷雨、晩秋、初霜、暮れゆく空、寒風

砂糖萵苣

autumn

さとうぢしゃ

意味・由来 「砂糖萵苣(さとうぢしゃ)」とは、砂糖(ビート糖)の原料となる「甜菜(テンサイ)」や「砂糖大根」の別名です。葉の形がチシャ(レタス類)に似ており、肥大した根に豊かな糖分を蓄えることからこの名がつきました。原産はヨーロッパですが、冷涼な気候を好むため日本では主に北海道で大規模に栽培されています。秋に大きく育った根を掘り出して収穫することから、秋の収穫の喜びや北国の大地を象徴する秋の季語となっています。 この季語で詠むコツ 砂糖萵苣は、北海道の広大な畑や肥沃な黒土、秋の澄んだ空気感とともに詠まれることが多い季語です。泥のついた力強い根の質感、トラクターや馬車に山積みにされる収穫の光景、そして晩秋特有の足早な夕暮れの寒さなど、視覚や触覚を意識して詠むと、実り豊かな北の大地の情感をリアルに表現できます。 相性のいい言葉・取り合わせ 地形・風土:十勝、北国、畝(うね)、黒土、地平線 収穫の動作:掘る、抜く、積む、運ぶ、積み重ねる 晩秋の情景:夕暮れ、夕日影、冷風、霜、野の光

小夜砧

autumn

さよぎぬた

意味・由来 「小夜砧(さよぎぬた)」とは、秋の夜更けに響き渡る砧(きぬた)を打つ音、あるいはその情景を指す季語です。「小夜」は夜、「砧」は織り上がった布や洗い張りした布を槌で打って柔らかくし、艶を出す道具およびその作業のことです。昔の女性たちが夜なべ仕事として寒さに備えて布を打つ乾いた澄んだ音は、冷え込む秋の夜気を通して遠くまで響き渡りました。古来、中国や日本の詩歌において、遠く離れた夫を思う妻の情愛や、旅人の孤独・望郷の念をかき立てる風情ある音として深く愛されてきました。 この季語で詠むコツ 「小夜砧」は非常に聴覚的な余情が豊かな季語です。単に「音が聞こえる」と描写するだけでなく、音がふと途切れた瞬間の「しじま(静寂)」や、夜の深まり、冷たい空気感などを意識して取り合わせると効果的です。また、現代では失われつつある生活道具の音だからこそ、古典的な風情や幻想的な夜景、旅愁といった抒情的な世界観と美しく調和します。 相性のいい言葉・取り合わせ ・音と静寂の対比(遠音、こだま、途絶ゆ、しじま、夜半) ・秋の夜の風物(月影、寒月、星あかり、ともしび、霜、夜気) ・旅愁や心情を誘う言葉(旅寝、まくら、更けゆく、しのぶ、愁い)

朝鳥渡る

autumn

あさどりわたる

意味・由来 「朝鳥渡る(あさどりわたる)」は、秋の朝、澄み渡った冷涼な空を渡り鳥の群れが南へと旅立っていく情景を指す季語です。秋の代表的な季語である「鳥渡る」のなかでも、特に早朝の清々しい光や冷気に焦点を当てた情緒豊かな表現です。夜明けの茜色から青空へと移り変わる時間帯、光を浴びながら一直線に、あるいは隊列を組んで飛んでいく鳥たちの姿には、季節の推移と生命の躍動、そして旅立ちの哀感が凝縮されています。 この季語で詠むコツ 朝特有の「澄んだ空気感」「冷え込み」「朝光の輝き」を鳥の飛翔と連動させて描写するのがコツです。ただ鳥が飛んでいる様子だけでなく、鳥を見上げる自分の立ち位置(畑仕事の朝、通勤途中、窓辺など)や、地上の静けさと空の動きとの対比を意識すると奥行きが生まれます。視覚的な光の描写や、羽音・かすかな鳴き声などの聴覚的要素を取り入れると、朝の清冽さが一層際立ちます。 相性のいい言葉・取り合わせ ・光や空の表現(「朝明(あさけ)」「茜さす」「青天」「白光」など) ・地上の朝の風景(「朝露」「霜気」「朝餉(あさげ)」「野良仕事」など) ・動作や心情(「仰ぐ」「見送る」「旅心」「息白し」など)

狂い花

winter

くるいばな

意味・由来\n「狂い花(くるいばな)」とは、春や秋など、本来の開花時期とは異なる冬の時期に、季節外れに咲いてしまった花のことを指します。主に桜、桃、躑躅(つつじ)、梨などの木に見られます。同義語として「返り花(かえりばな)」や「返り咲き(かえりざき)」などがあります。晩秋から冬にかけての穏やかで温かい小春日和に誘われ、植物が季節を勘違いして咲かせてしまうこの現象は、人々に驚きを与えると同時に、やがて来る厳しい寒さに晒される命のはかなさを感じさせます。\n\n### この季語で詠むコツ\n狂い花を詠む際には、単に「季節外れの花が咲いている」という珍しさを報告するだけではなく、周囲の「冬枯れた景色」や「冷たい空気」との対比(コントラスト)を意識することが重要です。周囲が生命力を失っていく冬の荒涼とした背景の中に、ぽつんと咲く一輪の色彩を描き出すことで、その花の健気さや孤独感、そして哀愁がよりいっそう際立ちます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・光や温もりを表す言葉(日差し、小春、日和、日あたり)\n・はかなさや静けさを表す言葉(一輪、ひっそり、影、風、こぼるる)\n・冬の寒冷な背景を表す言葉(冬枯れ、寒風、枯れ枝、霜、空)

韓藍の花

autumn

からあいのはな

意味・由来 「韓藍(からあい)」とは、熱帯アジア原産の「鶏頭(けいとう)」の古い呼び名、あるいは染料として用いられたタデ科の藍の一種を指す言葉です。『万葉集』の時代からその名が見られ、唐(海外)から渡来した鮮やかな植物という意味を持っています。古くはその汁を衣に擦り付けて染めたことから「擦衣(すりころも)」の原料としても知られ、独特の深い紅色彩が特徴です。俳句においては、主に「鶏頭」の雅称・古名として扱われ、単なる植物の描写を超えて、古典的な美意識やどこか哀愁を帯びた歴史の面影を呼び起こす季語として用いられます。 この季語で詠むコツ 「韓藍の花」として詠む際は、その言葉が内包する「古典的な響き」や「染める」という歴史的背景を意識することがポイントです。単に「鶏頭」と言うよりも、雅びで静寂な情緒が加わるため、コンクリートの都会的な風景よりも、古い寺社、寂れた庭、草庵、あるいは雨や風といった自然の細やかな移ろいと調和させると効果的です。また、花そのものの形だけでなく、その「紅(べに)」の色彩の濃淡や、秋の光に透ける葉の美しさに焦点を当てることで、この季語ならではの艶やかさと儚さを表現できます。 相性のいい言葉・取り合わせ 色彩や染色に関する言葉:「染む(そむ)」「紅(くれない)」「うすし」「露のいろ」 古風な佇まいを示す言葉:「草の庵(いお)」「垣根」「古寺」「水上(みなかみ)」 季節の寂寥感を醸し出す言葉:「秋風」「霜」「暮れがた」「雨の音」

里神楽

winter

さとかぐら

意味・由来\n里神楽(さとかぐら)とは、宮中で行われる御神楽(みかぐら)に対し、民間の神社で奉納される神楽を指します。冬の収穫を感謝し、悪霊を払い、新しい年の豊作や無病息災を祈るために舞われます。笛や太鼓の軽快なお囃子に合わせ、神話に登場する神々や、天狗、おかめ、ひょっとこなどの面をつけた踊り手がユーモラスに、あるいは厳かに舞うのが特徴です。冬の張り詰めた空気の中、神社の境内の寒さと、神楽殿から放たれる熱気が独特の対比を生み出します。\n\n### この季語で詠むコツ\n神楽全体の様子を漠然と描くよりも、五感を刺激する具体的なパーツに着目するのがコツです。例えば、踊り手が身につけている「面(おもて)」の表情、響き渡る「笛の音」や「太鼓の響き」、見物客の息の白さや、足元から這い上がってくる寒さなどを切り取ると、一気に臨場感が出ます。厳かさと滑稽さ(おどけ)の同居する雰囲気を表現すると、里神楽ならではの魅力が引き立ちます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n 聴覚:笛の音(ふえのね)、太鼓(たいこ)、お囃子(おはやし)、拍子(ひょうし)\n 視覚:面(おもて)、天狗(てんぐ)、ひょっとこ、篝火(かがりび)、白い息\n* 体感:寒夜(かんや)、夜寒(よさむ)、底冷え(そこびえ)、霜(しも)

霜夜

winter

しもよ

意味・由来 「霜夜(しもよ)」とは、霜が降りるほどに冷え込みの激しい冬の夜のことを指す季語です。放射冷却現象によって地表の熱が奪われ、大気が澄み渡ることで、空気は凍てつき、夜空には星が冴え冴えと輝きます。古来、ただ寒いだけでなく、静寂や張り詰めた緊張感、そしてどこか厳かな美しさを伴う夜の代名詞として、多くの俳人に好まれてきました。 この季語で詠むコツ 霜夜を詠む際は、単に「寒い」という主観的な感覚を述べるだけでなく、その冷気によってもたらされる「五感の揺らぎ」や「室内の静寂」を具体的に描写するのがコツです。例えば、冷え切った寝具の手触り、遠くから聞こえるかすかな音、あるいは灯りを消した瞬間の闇の濃さなど、微細な変化に目を向けることで、霜夜の張り詰めた空気感がより鮮明に伝わります。 相性のいい言葉・取り合わせ 霜夜という季語自体に強い冷気と静寂のイメージがあるため、あえてそれと対比させる温かみのある言葉(「灯」「ともしび」「火」「体温」など)や、逆に静けさを際立たせるかすかな音(「時計の音」「汽笛」「遠い足音」など)を取り合わせると効果的です。また、「消す」「遮る」「冴える」といった、動きを制限したり感覚を鋭敏にしたりする表現とも非常によく調和します。

今年綿

autumn

ことしわた

意味・由来\n「今年綿(ことしわた)」は、その年に収穫されたばかりの新しい綿(新綿)を指す秋の季語です。綿の実は秋になるとパチパチとはじけ、中からふっくらとした真っ白な綿毛を覗かせます。この新綿は、古くから布団の仕立て直しや防寒着の綿入れに使われ、冬を迎えるための大切な生活の備えでした。単なる農作物としての綿だけでなく、収穫の喜びや、これからの厳しい寒さに備える温かな安心感、そして家族を思いやる優しさが内包された、生活に根ざした情緒豊かな季語です。\n\n### この季語で詠むコツ\n今年綿を詠む際は、その最大の特徴である「白さ」や「柔らかさ」、「温もり」といった視覚や触覚に訴えかける表現を意識することが大切です。単に「白い綿がある」と描写するだけでなく、手で触れたときの弾力や、陽の光を浴びて輝く様子、新綿ならではのみずみずしい「新しさ」を切り取ると、季語の持つ生命力が引き立ちます。また、家族への愛情や日常の穏やかな営みと重ね合わせることで、より深い余韻を生み出すことができます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n 触覚・視覚を強調する言葉(ふっくら、柔らか、白、陽光、手元)\n 暮らしや家族を連想させる言葉(母、祖母、紡ぐ、針、衣、朝)\n* 季節の推移を表す言葉(初霜、北風、日だまり)

茜掘る

autumn

あかねほる

意味・由来 「茜掘る(あかねほる)」は、晩秋に染料や生薬の原料となる茜(アカネ)の根を地中から掘り起こす作業を指す秋の季語です。アカネはつる性の多年草で、秋が深まり茎葉が枯れ始める頃、地中に伸びた赤黄色の根を掘り出します。古来より日本の伝統的な赤色「茜色」を染め出す貴重な植物として重宝されてきました。冷え込む晩秋の山野で、土まみれになって力強く根を掘り出す情景には、季節の深まりと人々の生活の営みが色濃く宿っています。 この季語で詠むコツ 「茜」という言葉から連想される鮮やかな茜色の夕景と、実際に土を掘り返す泥臭く素朴な農作業との対比を意識すると奥行きが生まれます。掘り出された根の鮮烈な色や土の匂い、作業をする人の手や爪の汚れ、あるいは冷え込む秋の夕暮れの山気など、五感(視覚・嗅覚・触覚)に訴える具体的な描写を盛り込むのがポイントです。 相性のいい言葉・取り合わせ ・色彩・光:夕日、茜空、暮色、夕影、赤土 ・動作・道具:鍬(くわ)、籠、爪の汚れ、掘り起こす、担ぐ ・情景・気候:山里、深山、夕風、霜どけ、冷まじ

赤猿子

autumn

あかましこ

意味・由来 赤猿子(あかましこ)は、スズメ目アトリ科の渡り鳥「アカマシコ」のことです。シベリアなど北方から秋の深まりとともに日本へ越冬のために渡ってきます。雄の成鳥は頭部や胸、腰が鮮やかな紅色に染まるのが大きな特徴で、その愛らしく赤い姿を猿(ましこ)の顔に見立てて名付けられました。晩秋の山野や高原の薮、草地などで、草の実をついばむ姿が見られます。 この季語で詠むコツ 雄の鮮烈な紅と、枯れ色が広がり始める晩秋の景色との鮮やかな色彩対比を意識して詠むのが基本です。小鳥ならではの素早い動きや、草の実をついばむ仕草、静かな山峡に響く小さな鳴き声などに焦点を当てることで、寒さに向かう季節の哀愁と生きものの温もりを同時に表現できます。 相性のいい言葉・取り合わせ 自然・景物:草の実、枯野、落葉、薄(すすき)、山峡(やまかい)、初霜 動詞・様子:ついばむ、枝移る、日ざし、紅(べに)、群る、静けさ

秋起し

autumn

あきおこし

意味・由来 「秋起し(あきおこし)」とは、秋の収穫が終わった後の田んぼを耕し、土を掘り返しておく農作業のことです。別名「秋耕(しゅうこう・あきこう)」「刈田耕す」とも呼ばれます。晩秋の季語です。 稲刈り後の田んぼに残った切り株や藁を土中に漉き込み、冬の寒風や霜にさらすことで、土を殺菌・風化させ、翌春の作付けに向けて豊かな地力を蓄えさせる目的があります。収穫の喜びと祭りの喧騒が去り、冬支度へと向かう静かな農村風景を象徴する季語です。 この季語で詠むコツ 「秋起し」を詠む際は、掘り起こされたばかりの土の質感や匂い、色彩に注目するのがポイントです。黒々とした肥沃な土の塊、反転した土から立ち上る生温かい湯気や土の匂いなど、五感を使った描写が非常に効果的です。 また、耕運機のエンジン音、耕された土をついばみに集まる烏や小鳥、夕暮れの光や遠くの山並みなど、周囲の情景と組み合わせることで、晩秋特有の澄んだ空気感や作業に励む人の息遣い、季節の移ろいの寂寥感を鮮やかに表現できます。 相性のいい言葉・取り合わせ ・土に関することば:黒土、土くれ(土塊)、土の匂ひ、耕土、畝 ・生き物・自然:烏(からす)、鶺鴒(せきれい)、夕日、夕靄、茜空、小春日、遠山 ・農作業に関することば:トラクター、鋤、鍬、煙、夕支度

俳句 (20)

曙や 麦の葉末の 春の霜

からなしの渋きが上の露霜かな

寒露よりただちに霜にすすむべき

韓藍のちり残る葉や霜の中

霜夜とはなりぬるものの目覚めかな

霜夜の灯消さば闇なるほかはなし

霜夜また一聯の灯の消えにけり

初霜の屋根ことごとく銀化粧

水鳥のあそびてをりぬ霜降

狂ひ咲く菊も有けり霜の秋

霜降て朝夕寒し里の秋

草の戸や朝日のさせば秋の霜

秋霜や石に喰ひ入る落葉の影

秋の霜木彫の仏青かりき

初霜や菊冷えそむる草の庵

初霜やまだ若草の緑なる

初霜や柿の木赤く屋根白し

穴惑ふ蛇の尾ひくや草の霜

有明の月に立ちけり別れ霜

色ながら散るや初霜菊の庭