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犬桜は、山野に自生するバラ科の落葉高木です。名前に「桜」と付きますが、私たちがよく知るソメイヨシノなどの花とは大きく姿が異なり、小さな白い花がブラシのように細長く集まって咲きます。植物の名に付く「犬」は、「本物に似ているが役に立たないもの」「劣るもの」という意味合いで使われることが多く、華やかな桜に比べて花が地味で観賞価値が低いとみなされたことからこの名が付きました。しかし、華美でないぶん、新緑の山肌にひっそりと咲く姿には野趣あふれる素朴な美しさがあります。
一般的な桜が散り終えた晩春のころ、木々の若葉が茂る中で咲くため、春の深まりや山野の青葉とのコントラストを捉えるのがポイントです。桜の持つ「華麗さ」「散り際の儚さ」といった固定観念にとらわれず、白く細長い花穂の独特な形状や、日陰の山道でひっそりと咲く静けさを丁寧に写実してみましょう。「犬」という名が持つ少し切ない響きや、素朴で飾り気のない佇まいに光を当てると、味わい深い句になります。
・若葉、山笑う、遅桜(晩春の情景を際立たせる春の季語) ・山路、渓流、岩肌、木漏れ日(山野の環境を表す無季の言葉) ・白き穂、風、ひそやか、素朴(花の姿や雰囲気を表す無季の言葉)