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俳句において単に「鹿」というと秋の季語になり、妻を求めて鳴く物悲しい姿が連想されます。これに対して「春の鹿」は、厳しく寒かった冬を乗り越え、柔らかな日差しの中でほっと息をついているかのような鹿の姿を指します。 春を迎えた牡鹿は古い角を落とし、やがて皮膚に覆われた柔らかな袋角が生え始めます。また、暖かくなるにつれて冬毛が抜けて夏毛へと生え変わるため、少しぼさぼさとした愛嬌のある姿を見せることもあります。秋の張り詰めた哀愁とは対照的な、のんびりとした長閑な生命感がこの季語の魅力です。
秋の鹿の持つ緊張感とは異なる、春ならではの「緩やかさ」「あたたかさ」「無防備さ」を捉えるのがコツです。 ぽかぽかとした陽光の下でまどろんでいる様子、生え始めたばかりの瑞々しい若草をゆったりと食む口元、角が落ちて丸くなった頭など、具体的な仕草や特徴に焦点を当ててみましょう。古都の寺社や山里の穏やかな春の景色と響き合わせることで、心休まる優しい一句に仕上がります。
・若草、草萌(くさもえ)、木の芽(柔らかな命の息吹を表す春の言葉) ・日永(ひなが)、うららか、春光(穏やかな春の光を伝える言葉) ・参道、古寺、日だまり、足跡、耳(情景を落ち着かせる無季の言葉)