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三宝柑(さんぼうかん)は、江戸時代末期に紀州(現在の和歌山県)で発見された柑橘類で、春に旬を迎える果実です。果実の頭部がぽこっと盛り上がった徳利のような愛らしい形をしており、果汁が多くて爽やかな甘みと酸味を持ちます。大変珍重された果物で、紀州徳川家の殿様へ献上される際、神仏や貴人に供え物を捧げる台である「三宝」に載せて差し出されたことからその名がついたと伝えられています。かつては一般の栽培が禁じられた時期もあるほど大切に守られてきた歴史があります。
三宝柑を詠む際は、その独特でユニークな形や、春のうららかな光を浴びて輝く鮮やかな黄色の色彩を捉えることが第一のポイントです。また、少し厚みのある皮をむいた瞬間に立ちのぼるみずみずしい芳香や、手にとったときの確かな重みなど、五感を生かした描写を心がけると実感がこもります。素朴でありながらどこか気品のある佇まいを活かし、穏やかな朝の食卓の光景と合わせたり、遠い紀州の山河の情景を添えたりすると、春の生命力と温もりが自然に伝わる句になります。
・春光(しゅんこう) ・朝の陽(あさのひ) ・小刀(こがたな) ・指先(ゆびさき) ・紀州路(きしゅうじ)