墓洗ふ

墓洗ふ

はかあらう

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意味・由来

「墓洗ふ(はかあらう)」は、秋(初秋)の季語です。お盆(盂蘭盆会)の時期に先祖を迎える準備として、あるいは彼岸などの折に、墓石を水やたわしで丁寧に磨き清める行為を指します。水で苔や砂埃を洗い流すときのひんやりとした水の感触や、濡れて色を変える墓石の様子に、亡き人への追慕や敬虔な祈りが込められています。古来、お盆の行事と結びついて詠まれてきた生活感と哀感のある季語です。

この季語で詠むコツ

墓石を洗うという行為そのものだけでなく、「水」「音」「手の動き」「光の変化」などの具体的な情景に焦点を当てると詩情が立ち上がります。濡れて黒光りする石の質感や、水桶を運ぶ音、跳ねる水滴など、五感を使った描写を意識しましょう。また、亡き人との心の対話や、ふと我に返った瞬間の静けさ・寂しさを捉えることで、感傷に流されすぎない深い情感を描くことができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・水や作業に関する言葉:柄杓、手桶、たわし、滴り、飛沫、濯ぐ ・周囲の自然・環境:風の音、秋晴、青空、木漏れ日、蝉時雨、苔 ・心情や動作:ひとりの、黙して、指先、裾、膝まづく

墓洗ふ」の俳句例 (3件)

墓洗ふて故人に語ることもなし
正岡子規【現代語訳】墓をきれいに洗い清めたが、亡き友(故人)に今さら語りかけるような特別な言葉は何もないことだ。 【鑑賞】語る言葉がないというのは、無関心なのではなく、言葉を交わさずとも通じ合える深い親愛の情や、あるいは生死を前にした諦念を静かに表しています。墓石を黙々と洗う行為そのものが語らいであったと感じさせる名句です。
墓洗ふ水ひたひたと母の年
中村汀女【現代語訳】墓石に掛ける水がひたひたと流れていく。ふと気がつけば、自分もかつて亡くなった母の年齢になっていたことだ。 【鑑賞】墓に水を注ぐ「ひたひた」という瑞々しくも静かな擬音と、いつの間にか亡き母と同い年になった自らの年齢への感慨が重なり合います。命の継承と歳月の静かな流れを優しくしみじみと捉えた秀句です。
洗ひたる墓にもどれば洗ひをり
波多野爽波【現代語訳】すでにきれいに洗い終えたはずの墓に戻ってみると、誰かがまた丁寧に洗っていることだ。 【鑑賞】家族や親族がそれぞれ水を汲んでは、同じ墓石を何度も清めている様子を客観的にスケッチしています。感情を誇張せず、ただ繰り返される所作をそのまま提示することで、お盆の墓参りならではの情景と人々の敬虔な思いを飄々と描き出しています。

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