お正月の有名な俳句|守武・一茶・虚子・芥川の新年の名句と季語
はじめての俳句サポーター 凛
執筆者
新しい年を迎えた日の、あの改まった気持ち。昔の俳人たちも、その喜びや静けさを十七音に込めてきました。
この記事では、お正月の有名な俳句を5句選び、作者・新年の季語・意味をやさしく解説します。年賀状に添える一句を考えるときにも、ぜひお役立てください。
お正月の有名な俳句5句|作者と季語の早見表
まずは句と季語を一覧で見てみましょう。気になる一句があれば、下の鑑賞文から読み進めてみてください。
| 俳句 | 作者 | 季語(新年) |
|---|---|---|
| 元日や神代のことも思はるる | 荒木田守武 | 元日 |
| 目出度さもちう位也おらが春 | 小林一茶 | おらが春 |
| 去年今年貫く棒の如きもの | 高浜虚子 | 去年今年 |
| 元日や手を洗ひをる夕ごころ | 芥川龍之介 | 元日 |
| 松過の又も光陰矢の如く | 高浜虚子 | 松過 |
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名句を味わう前に|新年の俳句の読み方
新年の俳句を読むときは、まず季語を一つ見つけることから始めましょう。「元日」は一月一日、「去年今年」は年の境目、「松過」は正月飾りを外した後のころを表す新年の季語です。
次に、作者が何を見て、何を感じたのかを考えてみます。おめでたい気持ちだけでなく、少しの寂しさやユーモアも、お正月らしい一句になります。
江戸時代のお正月の名句
古い時代の句にも、私たちが新年に感じる喜びや、どこか控えめな気持ちが表れています。
元日や神代のことも思はるる
新しい年の朝に、神々の時代にまで思いが及ぶ一句です。元日という節目を、日々の暮らしよりもずっと大きな時間の流れと結びつけています。
出典・照合:三重県「俳句のくに・三重」句碑資料。句碑の表記に準拠。
目出度さもちう位也おらが春
「めでたさも中くらい」という、喜びすぎず、かといって嘆きもしない飾らない新年の気分。自分の暮らしに引き寄せてお正月を詠む、一茶らしい親しみのある句です。
出典・照合:信州デジタルコモンズ(県立長野図書館)。『おらが春』巻頭句。
明治以降のお正月の名句
近代になると、目に見えない時間の流れや、日常の何気ない動作も新年の句の題材になりました。
去年今年貫く棒の如きもの
去年から今年へ、暦の区切りは変わっても、時間や生き方には一本の筋が通っているようだ。目には見えない年月を「棒」という確かな形で表した、力強い一句です。
出典・照合:高浜虚子『六百五十句』(青空文庫)。鎌倉文学館にも自筆短冊資料あり。
元日や手を洗ひをる夕ごころ
華やかな元日も、いつしか夕方になります。手を洗う何気ない動作に、その日の終わりを感じる心を重ねた句です。正月だからといって、明るい気分ばかりを詠む必要はないと教えてくれます。
出典・照合:芥川龍之介の句と鑑賞(俳句の教科書)。諸資料で旧仮名遣いや表記に異同が見られます。
松過の又も光陰矢の如く
正月飾りを片付け、日常の暮らしに戻るころ。再び月日が矢のように過ぎてゆく、と軽い驚きを込めて詠んでいます。「松過」は松の内のあとを表す新年の季語です。
出典・照合:『角川ソフィア文庫 第4版増補 俳句歳時記 新年』掲載例。本文は確認できた掲載形「松過の」に準拠。
名句から学ぶ|自分でも一句を詠むコツ
1. 新年の季語を一つ選ぶ
まず「元日」「初空」「初詣」「雑煮」など、自分の過ごし方に合う季語を選びます。難しい季語を使うより、目の前の景色に自然になじむ言葉がよいでしょう。
2. 気持ちよりも、目の前の景色を書く
「うれしい」「めでたい」と説明する代わりに、お雑煮の椀や窓の朝日など、見えたものを一句の中心に置いてみます。一茶の句のように、率直な気持ちをそのまま表してもかまいません。
3. 名句をまねるときは、自分の体験に置き換える
好きな名句の「ものの見方」を参考にしながら、言葉は自分のものにして詠みましょう。名句を書き写したときは、必ず作者名を添えます。
初空や窓を開ければ鳥の声
(編集部作例)/季語:初空(新年)
元日の朝、窓を開けると鳥の声が聞こえる。特別な行事がなくても、身近な一場面から一句が作れます。
年の暮を詠んだ名句も読んでみよう
年が明ける前の「年の暮」「除夜」などは冬の季語です。お正月の句とは違って、一年を静かに見送る気持ちがよく表れます。年末年始を通して俳句を楽しみたい方は、冬の句も読み比べてみてください。
冬の有名な俳句7選 ›芭蕉・一茶・子規・虚子らの冬の名句を季語とともに紹介しています。お正月の名句|よくある質問
Q. 年賀状に有名な俳句を書いてもよいですか?
作者名を添え、確認した表記で引用すると丁寧です。ただし、作品が著作権で保護されている場合や商用の印刷物に掲載する場合は、利用条件の確認が必要なこともあります。年賀状に自作の句を添える方法は、次の記事でも紹介しています。
年賀状に添える俳句 ›年賀状に使いやすい季語や、自分で一句を作るときのポイントを紹介。Q. 「去年今年」は大晦日の冬の季語ではないのですか?
「去年今年」は、去年から今年へと移る一瞬を表しますが、歳時記では新年の季語です。一方「除夜」「大晦日」は冬の季語です。
Q. お正月の季語は「元日」だけですか?
いいえ。「初日」「初夢」「雑煮」「若水」「松過」など、お正月の暮らしに結びついた言葉が多くあります。季語の分類や調べ方は、歳時記の選び方と使い方も参考にしてください。
名句に学んで、新年の一句を
名句の魅力は、特別なできごとだけを詠んでいないところにもあります。元日の夕方、正月明けのいつもの暮らし、家族の何気ないひと言。心に残った小さな場面が、あなた自身の一句になるかもしれません。
年末年始の俳句ガイド ›季語・年賀状・名句・初句会など、年末年始の俳句の楽しみ方をまとめています。句の表記・出典について
表記は本文中の照合資料に基づきます。自筆、刊本、歳時記では表記が異なる句があります。与謝蕪村「日の光今朝や鰯のかしらより」は、きごさいの季語別『蕪村句集』で「柊挿す」(晩冬)の句に分類されるため、新年の名句としては掲載していません。
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