除夜の鐘・年越しの俳句|大晦日と年の暮を詠む季語と名句
はじめての俳句サポーター 凛
執筆者
大掃除を終えた部屋、年越し蕎麦の湯気、遠くから聞こえる除夜の鐘。年の終わりには、いつもの暮らしの中に、少ししみじみとした時間が生まれます。
俳句では、「年の暮」「大晦日」「除夜の鐘」は冬の季語です。この記事では、年越しに使いたい季語の意味と、芭蕉・一茶・虚子の名句、身近な出来事を一句にするコツをご紹介します。
この記事でわかること
- 年末と新年では、俳句の季語がどう違う?
- 「年の暮」「除夜の鐘」「数へ日」の使い分け
- 出典を確認した年末の名句3句
- 除夜・年越し蕎麦を題材にした作句例
年末は「冬」、元日からは「新年」の季語
俳句の歳時記は、春・夏・秋・冬の四季に加えて、「新年」を独立した部として扱うことがあります。十二月三十一日までの「行く年」「除夜」などは冬、元日以降の「初日」「初詣」「雑煮」などは新年の季語です。
12月31日まで
冬の季語
年の暮・行く年・大晦日・除夜の鐘・年越蕎麦
1月1日から
新年の季語
初日・初詣・雑煮・去年今年
「除夜の鐘」は、大晦日の夜から新年にかけて鳴らされることもあります。鐘が鳴り終わった瞬間で季節が切り替わるのではなく、句の中で何を中心に詠むかによって季語を選ぶと、自然にまとまります。
季語カード|新年
去年今年(こぞことし)
去ってゆく年と、迎えた年のつながりを、新年の感慨として詠む季語です。「去年今年」は大晦日だけの季語ではありません。
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年の暮から除夜まで|使いやすい冬の季語一覧
年末の季語には、時間の流れを表すものと、大掃除や年越しの食卓など、暮らしの場面を表すものがあります。
一年の終わりを感じる季語
| 季語 | 読み | 意味・場面 |
|---|---|---|
| 年の暮 | としのくれ | 年の終わりが近づいたころ |
| 行く年 | ゆくとし | 過ぎてゆこうとする一年への感慨 |
| 数へ日 | かぞえび | 残りの日を指折り数えるような年末 |
| 年の瀬 | としのせ | 年末、とくに押し詰まったころ |
新年を迎える支度の季語
| 季語 | 読み | 意味・場面 |
|---|---|---|
| 煤払 | すすはらい | 一年の煤やほこりを払い清めること。現代の大掃除にも通じる |
| 年の市 | としのいち | 正月用品などを売る、年末の市 |
| 年忘 | としわすれ | 一年の労をねぎらう集まり |
| 年用意 | としようい | 新しい年を迎えるための準備 |
大晦日の夜を表す季語
| 季語 | 読み | 意味・場面 |
|---|---|---|
| 大晦日 | おおみそか | 十二月三十一日、一年最後の日 |
| 除夜 | じょや | 大晦日の夜 |
| 除夜の鐘 | じょやのかね | 大晦日から新年にかけ、寺院でつく鐘 |
| 年越 | としこし | 旧年から新年を迎える、年の境目 |
| 年越蕎麦 | としこしそば | 大晦日に食べる蕎麦 |
季語カード|冬
除夜の鐘(じょやのかね)
寺院で大晦日の夜から元日にかけて鳴らす鐘。百八つの煩悩にちなみ、百八回つくという風習が広く知られています。
「年越蕎麦」は細く長い蕎麦にあやかり、長寿などを願う食習慣と結びついています。具材や食べ方は家庭や地域によってさまざまです。
年の暮を詠んだ有名俳句3句|芭蕉・一茶・虚子
俳人たちは、年末の慌ただしさだけでなく、旅の途中の心持ちや、歳月の大きさも十七音に託しました。確認できた作品の表記と出典を添えてご紹介します。
年暮れぬ 笠きて草鞋 はきながら
松尾芭蕉
出典:『野ざらし紀行』(芭蕉翁顕彰会掲載句)
笠をかぶり、草鞋を履いた旅姿のまま、また一年が暮れてゆきます。旅の厳しさと、なお歩き続ける姿が重なる一句です。
ともかくも あなた任せの としの暮
小林一茶
出典:『おらが春』(一茶の俳句データベース掲載句)
一年の喜びも悲しみも抱えながら、最終的には仏に身を任せる心境が詠まれています。「あなた任せ」は、一茶の信仰と人生経験に支えられた言葉です。
年を以て 巨人としたり 歩み去る
高浜虚子
出典:『五百句』(愛媛県立図書館の調査記録で確認)
去りゆく年を、一人の大きな巨人にたとえた句。姿の見えない「時」を、ゆっくり遠ざかる大きな人影として感じさせます。
除夜の鐘・年越しの俳句を作ってみよう
ここからは、俳句びと編集部による作例をご紹介します。実在の俳人が詠んだ句ではありません。
1.年越しの「音」を詠む
鐘の響き、蕎麦をすする音、遠くの人の声。静かな夜に耳を澄ませると、句の材料が見つかります。
年越の 蕎麦すする音 ばかりかな
俳句びと編集部(編集部作例)
五・七・五:としこしの(5)/そばすするおと(7)/ばかりかな(5)
年末の食卓で、蕎麦をすする音だけが聞こえる様子。言葉を交わさなくても、穏やかな時間が伝わります。
2.一年を映す「もの」を選ぶ
「今年はいろいろあった」とまとめる代わりに、柱の背丈の印や、使い込んだ道具など、一年の変化がわかるものを探してみましょう。
行く年の 柱に残る 背丈かな
俳句びと編集部(編集部作例)
五・七・五:ゆくとしの(5)/はしらにのこる(7)/せたけかな(5)
柱に残る子どもや孫の背丈の印。少しずつ伸びた跡が、過ぎてゆく一年を感じさせます。
3.少しユーモラスな場面も俳句に
年末の俳句は、しんみりしたものばかりではありません。鐘を数えるつもりで眠ってしまう、そんな小さな出来事も句になります。
除夜の鐘 数へ終はらぬ うちに寝る
俳句びと編集部(編集部作例)
五・七・五:じょやのかね(5)/かぞえおわらぬ(7)/うちにねる(5)
百八つの鐘を数えている途中で、つい眠ってしまう。年末の静けさに、親しみやすいおかしみを添えた作例です。
4.年末らしい小さな発見を詠む
片づけの途中で見つけた便りなど、身近なものにも一年を振り返るきっかけがあります。
数へ日や 棚の奥から 古い文
俳句びと編集部(編集部作例)
五・七・五:かぞえびや(5)/たなのおくから(7)/ふるいふみ(5)
年末の整理で、棚の奥から昔の手紙が出てきた場面。残り少ない日と、過ぎた時間が静かに重なります。
年越しの俳句を作る3つのコツ
① 季語を一つ、主役にする
「除夜の鐘」「年越」「年の暮」はどれも年末の季語です。初心者のうちは、一句に一つ選ぶと焦点が定まりやすくなります。
② 「気持ち」より「見たもの・聞いたもの」を
「寂しい年末」と書く代わりに、「片づいた部屋の時計の音」「蕎麦の湯気」などを置いてみましょう。景色を通して思いが伝わります。
③ 五・七・五は声に出して整える
音の数え方は、文字数とは違います。たとえば「除夜の鐘」は「じょ・や・の・か・ね」で五音。迷ったときは、575(五七五)の数え方を参考にしてください。
一句を作るミニ手順
- 「年の暮」「除夜」などから季語を一つ決める
- 目にした場面や聞こえた音を一つメモする
- 言葉を削り、五・七・五に整えてみる
除夜の鐘・年越しの俳句|よくある質問
Q.「除夜の鐘」は冬の季語ですか?
はい。大晦日の夜に鳴らす鐘を表す、冬の季語です。年明けまで鐘が続くこともありますが、伝統的な歳時記では年末の季語として扱います。
Q.除夜の鐘は、なぜ百八回つくのですか?
人間の煩悩を百八と数える考え方に結びついた習わしです。ただし、百八という数の由来には複数の説があり、実際の回数や方法は寺院によって異なる場合があります。
Q.「年の暮」と「年の瀬」の違いは?
どちらも年末を表す冬の季語です。「年の瀬」には、年が押し詰まって慌ただしくなる印象が、より強く感じられます。
Q.「数へ日」はいつごろ使う言葉ですか?
残りの日を指折り数えるほど少なくなった年末を指します。大晦日の数日前など、年の終わりが迫った実感を表したいときに使いやすい季語です。
Q.「去年今年」は冬の季語ではないのですか?
「去年今年(こぞことし)」は、新年の季語です。年の移り変わりを、年が明けた側から振り返る感慨を表します。
Q.除夜の鐘の句を年賀状に書いてもいいですか?
書いてはいけない決まりはありませんが、年賀状は新しい年を祝う便りなので、一般的には「初日」「初詣」など新年の季語を使うほうが自然です。年賀状に添える俳句も参考にしてください。
一年の終わりに、一句を
慌ただしい年の瀬にも、少し立ち止まってみると、句になる瞬間があります。時計の針、ふすまの向こうの物音、食卓に立つ湯気。すべてを詠み込もうとせず、心に残った一場面を選んでみましょう。
この一年を、自分の言葉で静かに締めくくる。そんな一句を、年の暮に残してみませんか。
参考資料・句の出典
記事内の「編集部作例」は俳句びと編集部の作例で、歴史上の俳人の作品ではありません。
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