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「寒やいと」とは、寒の時期(小寒から立春の前日までの約三十日間)にすえるお灸(やいと)のことです。「寒灸(かんきゅう)」とも呼ばれます。昔から、最も寒さが厳しいこの時期にお灸をすえると、身体の芯から温まり、冷えや痛みを和らげるだけでなく、一年のあいだ無病息災で元気に過ごせると信じられてきました。冬の厳しい寒さのなかで行われる、庶民の知恵と生活に根ざした民間療法であり、温もりある冬の季語です。
「寒」という厳しい寒さと、「やいと」が持つ微かな火やチクリとした熱さの対比を描くのが基本のコツです。また、誰かに背中へすえてもらう情景を描くことで、家族のいたわり合いや温かな生活感を詠み込むことができます。艾(もぐさ)から立ちのぼる一筋の白い煙、部屋に漂う独特の芳香、肌に感じる一瞬の熱さなど、視覚・嗅覚・触覚といった五感を意識して言葉を選ぶと、より臨場感あふれる生き生きとした句になります。
・身体や動作に関する言葉(丸き背、肌、肩、すくめる、息を凝らす) ・五感に訴える言葉(艾の煙、匂ひ、一筋、熱き、ほの白き) ・生活空間に関する言葉(障子、畳、薄日、古鏡、茶の間)