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吟行2026年10月5日(更新: 2026年10月5日)

名湯と俳句の旅|城崎温泉・道後温泉・別府温泉の文学碑と湯浴み吟行

俳句びと編集部

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名湯と俳句の旅|城崎温泉・道後温泉・別府温泉の文学碑と湯浴み吟行

温泉旅行に行くと、湯につかって、食べて、眠って、それで終わってしまいがちです。

けれども、湯上がりのあの気分。体がゆるんで、風が気持ちよくて、何を見てもやさしく見えるあの時間は、句を作るのに、いちばん向いた時間かもしれません。

この記事では、俳人ゆかりの道後温泉、文学のまちの城崎温泉、湯けむりの別府・鉄輪温泉の3つの名湯をめぐりながら、温泉旅行を「吟行の旅」にする方法をご紹介します。

どれか一つの温泉地を訪れるときにも使えるように、町の歩き方、季語の見つけ方、そして湯上がりに一句を作るためのヒントまでまとめました。

この記事でわかること

  • 子規と山頭火ゆかりの道後温泉の歩き方
  • 文学のまち・城崎温泉で、外湯めぐりをしながら句を作る方法
  • 別府・鉄輪温泉の湯けむりを詠むヒント
  • 温泉にまつわる季語と、シニアの入浴の注意
  • 「湯上がりに書く」句作のコツ

吟行がはじめての方は、先に「初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド」をお読みいただくと、持ち物や歩き方のコツが分かります。

1.道後温泉(愛媛県松山市)― 俳人ゆかりの湯

日本でもっとも古い温泉のひとつとされる道後温泉は、正岡子規のふるさと・松山にあります。

子規も、友人の夏目漱石も、この湯に通ったとされています。

十年の汗を道後の温泉に洗へ  正岡子規

明治29年(1896年)の句とされています。「温泉」は「ゆ」と読みます。

長い年月の苦労の汗を、ふるさとの湯で洗い流せ。旅を終えて帰ってきた人への、呼びかけの句です。

道後温泉を訪れたら、温泉そのものだけでなく、子規が生まれ育った松山という土地にも目を向けてみましょう。

湯に入り、町を歩き、子規の句を思いながら一句を考える。それだけでも、普通の温泉旅行とは少し違った時間になります。

道後での吟行ポイント

  • 道後温泉本館の建物を見る
  • 温泉街をゆっくり歩く
  • 子規の句を思い浮かべる
  • 湯上がりの体の感覚をメモする

飛鳥乃湯泉と道後温泉本館

道後温泉には、重要文化財の道後温泉本館のほかに、別館「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」があります。

飛鳥乃湯泉は飛鳥時代の建築様式を取り入れた建物で、道後温泉本館とはまた違った雰囲気を楽しめます。

温泉街を歩く際には、建物の形や屋根、路地、行き交う人の姿などにも目を向けてみてください。

俳句の材料になるのは、必ずしも特別なものだけではありません。

「湯上がりの人が浴衣で歩いている」「夕方の温泉街に明かりが灯る」といった、何気ない景色も句の種になります。

一草庵 ― 山頭火が最期を過ごした庵

道後温泉から少し足をのばすと、漂泊の俳人・種田山頭火が最後の1年を過ごした「一草庵(いっそうあん)」があります。

昭和14年(1939年)、山口の湯田温泉から旅立った山頭火は、松山に庵を結び、翌年、ここで亡くなりました。

庵は再建されたもので、外観は自由に見学できます。年末年始を除く土日・祝日には、庵の中も見学できます。

「一草庵」の扁額は、山頭火の師・荻原井泉水の筆によるもので、庵の敷地には山頭火の句碑が4基あります。

もりもりもりあがる雲へ歩む  種田山頭火

山頭火の最後の句とされています。

盛りあがる雲に向かって、歩いていく。死の直前まで、歩く人の句でした。

一草庵を訪ねたら、建物だけを見るのではなく、周囲の空や木々、風にも目を向けてみましょう。

一草庵を訪ねるときは、公開日時を確認しましょう。

外観と内部で見学できる時間が異なるため、訪問前に松山市の公式情報をご確認ください。

温泉に入って、子規の句を思い、山頭火の庵を訪ねる。 道後は、俳句をする人にとって、特別な湯の町です。

松山と子規については「正岡子規の故郷・松山を歩く吟行ガイド」、山頭火については「種田山頭火ゆかりの地へ」でご紹介しています。

正岡子規の俳句・人物ページを見る

種田山頭火の俳句・人物ページを見る

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2.城崎温泉(兵庫県豊岡市)― 文学のまちの外湯めぐり

城崎温泉は、大谿川(おおたにがわ)に沿って柳並木と木造の旅館が並ぶ、兵庫県の北の温泉町です。

町の中に7つの外湯(共同浴場)があり、浴衣に下駄で、外湯をめぐって歩くのが城崎の楽しみ方です。

温泉から次の温泉へ歩く。その途中で橋を渡り、柳を眺め、川の音を聞く。

この歩く時間そのものが、吟行になります。

文学のまち・城崎

城崎は「文学のまち」としても知られています。

作家の志賀直哉が、この町での体験をもとに短編『城の崎にて』を書いたことをはじめ、多くの文人が城崎を訪れ、作品を残しました。

温泉だけでなく、文学を感じながら歩けることも城崎の魅力です。

城崎文芸館

町の中にある城崎文芸館では、城崎ゆかりの文学者の作品や資料が展示されています。

外湯めぐりの合間に立ち寄って、「この町で、昔の文人は何を書いたのか」を知っておくと、町歩きの見え方が変わります。

展示内容は訪問時期によって変わる場合があるため、訪問前に公式サイトで確認しましょう。

城崎で拾いたい句の種

  • 柳の枝
  • 大谿川の水音
  • 橋を渡る人
  • 浴衣の袖
  • 下駄の音
  • 夕暮れの温泉街

外湯めぐりで句を作る

城崎の外湯めぐりは、吟行にぴったりです。

外湯から外湯へ、歩いて数分。その間に、柳、川、橋、下駄の音、浴衣の人、湯けむり。

湯から出て、次の湯へ歩くあいだに、ひとつずつ句の種を拾ってください。

一つの外湯につき一句、と決める必要はありません。

まずは気になったものを短くメモして、宿に戻ってから句に整えてみましょう。

城崎温泉の文学・吟行情報を見る

3.別府・鉄輪温泉(大分県別府市)― 湯けむりの町

別府は、日本一の湧出量をほこる温泉地です。

そのなかでも、別府八湯のひとつ・鉄輪(かんなわ)温泉は、町のあちこちから白い湯けむりが立ちのぼる、湯治場の風情が残る地区です。

鉄輪温泉は、鎌倉時代に一遍上人が、高温の噴気を利用した「蒸し湯」を開いたことに始まるとされています。

いまも「鉄輪むし湯」で、石菖(せきしょう)という薬草を敷きつめた、和風のサウナのような蒸し湯を体験できます。

鉄輪の町では、湯けむりを見上げるだけで、句になります。

道路の排水溝からも、家の屋根の煙突からも、湯けむりが上がっています。

朝と夕方、晴れの日と曇りの日。光や風によって、湯けむりの見え方も変わります。

湯けむりを「見たまま」から一歩進める

「湯けむりが白い」とだけ書くのではなく、湯けむりが何に重なっているのかを見てみましょう。

屋根の向こうに立つのか、山にかかるのか、夕日の中で色が変わるのか。

同じ湯けむりでも、背景を変えるだけで句の印象は大きく変わります。

鉄輪で観察したいもの

  • 立ちのぼる湯けむり
  • 湯けむりと空
  • 屋根越しの湯けむり
  • 湯の音
  • 石畳や坂道
  • 朝夕で変わる町の光

鉄輪では、温泉に入ることだけを目的にせず、町そのものを歩いてみましょう。

湯けむりの立つ路地を歩けば、そこには旅先でしか出会えない景色があります。

「湯けむり」の季語・関連する季語を見る

4.温泉にまつわる季語

温泉そのもの(「温泉」「湯」)は、季語ではありません。

けれども、温泉のまわりには、季語がたくさんあります。

季節 温泉の旅で使いやすい季語 感じたい景色
春 春の雪・春宵・朧月 夜の温泉街、春の空気
夏 浴衣・夕涼み・団扇 湯上がりの夜風、浴衣姿
秋 秋の夜・夜長・月・紅葉 静かな夜の温泉街
冬 湯ざめ・冬ぬくし・雪見・湯婆・冬の雨 湯上がりの寒さ、雪や雨

「湯ざめ」は冬の季語です。

温泉から出て、体が少しずつ冷えていく感じ。温泉の句には使いやすい季語のひとつです。

「温泉だから温泉という言葉を使わなければいけない」と考える必要はありません。

湯上がりの風、浴衣、夜の町、雪、月。温泉に行ったときに感じたものから季語を探してみましょう。

温泉吟行では「湯」よりも「湯のあと」を見る。

温泉そのものではなく、湯から出た自分が何を感じたのかを探すと、季語が見つけやすくなります。

温泉に使える季語をもっと見る

5.温泉吟行の歩き方と、入浴の注意(シニア向け)

温泉吟行の1日の流れ

  1. 到着して、まず町を歩く(1〜2時間)
    湯に入る前に、町の景色を見て、句の種をメモします。
  2. 湯に入る
    句のことは忘れて、ゆっくり過ごします。
  3. 湯上がりに、縁台や部屋で句を書く(30分)
    湯上がりの気分のまま、メモを見ながら一句を考えます。
  4. 夕食のあと、夜の町をもう一度歩く(30分)
    夜の湯けむり、灯り、下駄の音などを拾います。
  5. 翌朝、朝湯のあとで句を整える
    一晩置いた句を、もう一度読み返します。

入浴の注意

  • 長湯をしないでください。 熱い湯に長くつかると、のぼせたり、めまいを起こしたりすることがあります。
  • 食事の直後や、お酒を飲んだあとの入浴は避けてください。
  • 入浴の前後に、水分をとってください。
  • 浴室の床はすべりやすいです。 ゆっくり歩き、手すりを使ってください。
  • 持病のある方や、体調に不安のある方は、かかりつけの医師にご相談ください。
  • むし湯は、とくに体への負担が大きい入浴法です。 体調のよいときに、係の人の説明をよく聞いて利用してください。

3つの温泉をめぐる場合

3つの温泉は、四国・近畿・九州と離れているので、一度の旅で3つを回るのではなく、それぞれ1泊2日で訪ねるという楽しみ方もあります。

一つの温泉地をじっくり歩けば、その土地の景色や音を句帳に残す時間も十分に取れます。

6.湯上がりに一句 ― 温泉吟行のヒント

ヒント1:湯の中では考えない、湯上がりに書く

湯につかっているときは、句のことは忘れてください。

句は、湯から上がって、体がゆるんでいるあいだに生まれます。

脱衣所から出たら、すぐに縁台や部屋で、見えたもの・感じたものを書いてください。

ヒント2:体の感覚を詠む

湯上がりの体の感覚は、それだけで句になります。

ほてり、汗、風の冷たさ、浴衣の重さ、髪のぬれ。

景色より先に、自分の体を詠んでみてください。

ヒント3:音を拾う

温泉町は、音の町です。

下駄の音、川の音、湯の流れる音、遠くの笑い声。

湯けむりの町・鉄輪では、湯が噴き出す音も聞こえます。

目を閉じて、耳だけで町を感じてみるのもおすすめです。

ヒント4:「湯ざめ」で結ぶ

冬の温泉なら、季語は「湯ざめ」で。

湯上がりのあたたかさが、少しずつ冷めていく。

その時間の長さが、句の余韻になります。

「湯ざめ」の季語を詳しく見る

作例

下駄の音ひとつ遠のく夜長かな  (編集部作例)

湯けむりの向かうの屋根も冬ぬくし  (編集部作例)

浴衣の袖に句帳をしまふ宿の縁  (編集部作例)

7.各温泉の施設情報とアクセス

道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(愛媛県松山市)

項目 内容
営業時間 6:00〜23:00(札止め22:30)
休み 年中無休(12月に大掃除のための休館日あり)
入浴料 1階浴室 大人610円/小人300円
※2階大広間・個室の利用プランは別料金
アクセス 伊予鉄道 市内電車「道後温泉駅」から徒歩約3分

城崎文芸館(兵庫県豊岡市)

項目 内容
開館時間 9:00〜17:00(最終入館16:30)
休館日 毎月最終水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月31日〜1月1日)
入館料 大人500円/中高生300円/小学生以下無料
アクセス JR山陰本線「城崎温泉駅」から徒歩約5分

鉄輪むし湯(大分県別府市)

項目 内容
営業時間 6:30〜20:00(最終受付19:30)
休み 第4木曜日(祝日の場合は翌日)
入浴料 700円(浴衣のレンタルは別料金)
アクセス JR日豊本線「別府駅」西口から亀の井バスで約20分「鉄輪」下車、徒歩約2分

※施設情報は2026年9月時点の原稿情報です。営業時間・休館日・料金等は変更される場合があるため、公開前に各施設の公式サイトで最新情報をご確認ください。

一草庵については、施設情報の表には含めず、見学については本文の説明にとどめています。訪問前に松山市の公式情報をご確認ください。

8.温泉宿で、句を整える夜を

温泉吟行のいちばんの贅沢は、宿で、その日の句をゆっくり整える夜です。

昼に歩いて拾った句の種を、夕食のあと、部屋の机で、もう一度読み返してください。

湯上がりには思いつかなかった言葉が、一晩置くことで浮かんでくることもあります。

翌朝の朝湯のあとには、また別の句が生まれているかもしれません。

道後・城崎・別府は、どれも歴史のある宿がそろった温泉地です。

個人で宿や交通を手配するのが不安な方は、添乗員が同行するツアーを使う方法もあります。

温泉旅行の宿選びも吟行の一部。

町歩きから宿、夕食、湯上がりの時間まで、無理のない旅程にすると、句を作る時間もしっかり残せます。

温泉地をめぐる旅行・ツアーを探す

よくある質問

温泉で俳句を作るコツはありますか

湯につかっているときは句のことを忘れ、湯上がりの体がゆるんでいるうちに、縁台や部屋で書くのがおすすめです。

景色より先に、ほてりや風の冷たさなど、自分の体の感覚を詠むと、実感のこもった句になります。

温泉に関係する季語はありますか

「温泉」そのものは季語ではありませんが、「湯ざめ」(冬)、「浴衣」(夏)、「雪見」(冬)、「夜長」(秋)など、温泉のまわりには季語がたくさんあります。

とくに「湯ざめ」は、温泉の句に使いやすい季語です。

道後温泉に、俳人ゆかりの場所はありますか

あります。

道後温泉は正岡子規のふるさと・松山にあり、子規も漱石もこの湯に通ったとされています。

また、種田山頭火が最後の1年を過ごした「一草庵」があり、山頭火の句碑が4基あります。

シニアが温泉旅行で気をつけることはありますか

長湯をしない、食事の直後やお酒のあとの入浴を避ける、入浴の前後に水分をとる、浴室ではゆっくり歩く、といった点に注意してください。

持病のある方や体調に不安のある方は、かかりつけの医師にご相談ください。

9.まとめ

温泉旅行は、吟行の旅になります。

町を歩いて、湯につかって、湯上がりに一句。

宿の夜に、その句を整える。

それだけで、いつもの温泉旅行が、句帳に残る旅に変わります。

子規の湯、文人の町の外湯、湯けむりの町。

どの温泉に出かけても、湯上がりの縁台で、自分の体の感じを一句にしてみてください。

上手に詠もうとしなくても大丈夫です。まずは、その日の旅で「いちばん心に残ったもの」を一つだけ書いてみましょう。

その一言が、次の一句につながっていきます。

吟行の持ち物や歩き方のコツは、「初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド」でご紹介しています。

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