1648年 - 1716年

山本荷兮

やまもとかけい

作風・特徴

初期蕉風を確立した格調と力強さを持つ尾張的作風。芭蕉の革新を最初に支えた実践力が特徴で、連句の技量も高く評価されていた。

生涯・略歴

江戸前期の俳人・医師。松尾芭蕉の高弟で名古屋俳壇の中心的人物。芭蕉の代表的句集『猿蓑』(元禄四年)の前段にあたる撰集『冬の日』(天和三年)を編集・刊行し、初期蕉風の確立に決定的な役割を果たした。医師としても活躍する傍ら俳諧を深め、尾張における蕉風の拠点を築いた。後に芭蕉と疎遠になったとも伝わるが、蕉風成立史における功績は極めて大きい。

代表句 (5件)

暁の つるべに上がる 椿かな
稲妻に 大仏拝む 野中かな
かたみ草植ゑおく庭の秋の風
季語: かたみ草 (autumn)
【現代語訳】亡き人を偲ぶ形見草を植えておいた庭に、寂しい秋の風が吹き抜けていく。【鑑賞】芭蕉の弟子であり「芭蕉十哲」の一人である荷兮の一句。形見として大切に育てている庭の草と、それを寂しく揺らす秋風の取り合わせが、哀愁に満ちた心象風景を美しく描き出しています。
京官の除目もすみて月の舟
季語: 京官除目 (autumn)
【現代語訳】京官除目の慌ただしく緊張した儀式も無事に終わり、秋の澄んだ月光の下、静かに舟が浮かんでいる。 【鑑賞】人事の喧噪や悲喜こもごもが去った後の、静まり返った秋の夜の風情を詠んだ句です。宮中のざわめきと、自然界の静けさ(月光と舟)との対比が見事で、除目が終わった後の安堵感と秋特有の寂寥感が余韻として響きます。
梅紅葉あるじは奥に琴きくや
季語: 梅紅葉 (autumn)
【現代語訳】庭の梅が静かに紅葉している。この家の主人は屋敷の奥で琴の音に耳を傾けているのだろうか。 【鑑賞】静かに色づき散りゆく梅紅葉の庭と、屋敷の奥からかすかに聞こえてくる琴の音を結びつけた雅やかな一句です。江戸前期の蕉門重鎮・荷兮ならではの、気品あふれる静寂の美が描かれています。