1718年 - 1787年

大島蓼太

おおしまりょうた

作風・特徴

平明で叙情豊か。庶民的な親しみやすさと格調を兼ね備えた蕉風復興の中心的作風。温かみのある平易な言葉で自然と人情を詠んだ。

生涯・略歴

江戸中期を代表する俳人。蕉風復興運動の担い手の一人として活躍し、平明で叙情豊かな句風を確立した。江戸を中心に広大な門弟網を持ち、その影響力は全国に及んだ。代表句集に『蓼太句集』がある。与謝蕪村と並んで中興期の俳壇をけん引した人物であり、「蓼太七部集」などを通じて蕉風の普及に努めた。

代表句 (8件)

追われては 月に隠るゝ 蛍かな
日にうとき堂のひさしや観音草
季語: 観音草 (autumn)
【現代語訳】日の光があまり届かない、薄暗いお堂の軒下に、観音草がひっそりと生い茂っている。【鑑賞】江戸中期の俳人・大島蓼太の作。日陰の侘びた場所にお堂に寄り添うように自生する観音草の姿は、素朴でありながらもどこか厳かで、秋の深まりゆくお寺の風情を静かに漂わせています。
身にしむや月に桂の花の散る
季語: 桂の花 (autumn)
【現代語訳】秋の夜風が身にしみる。あの美しい月からは、今頃、伝説の桂の花がしめやかに散っているのだろうか。 【鑑賞】「身にしむ」という秋の寂寥感を表す季語と、月中の桂の花という幻想的なイメージを重ね合わせています。冷ややかな月光を、視覚的・触覚的に捉えた深い味わいのある一句です。
狂ひ咲く桜や僧の世をいとふ
季語: 狂い花 (winter)
【現代語訳】季節外れの冬に狂い咲いている桜よ。その姿は、まるで俗世を嫌って静かに生きる出家僧のようである。\n【鑑賞】寒々しい冬の景色の中にひっそりと咲く桜を、賑やかな春の世(俗世)を避けて仏門に入った僧侶の姿に見立てています。狂い咲く花の寂しげでありながらも凛とした孤高の佇まいを、見事に表現しています。
十八夜の月さしのぼる梢かな
季語: 十八夜月 (autumn)
【現代語訳】夜もだいぶ更けたころ、十八夜の月が木々の梢のあいだから静かに差し昇ってきたことだ。【鑑賞】宵闇が深まったころ、ようやく木立の梢をかすめて光を放ち始めた月の姿を捉えています。月をじっと待っていた時間の長さと、梢の影を透かして現れた瞬間の清らかな趣が見事に描き出されています。
強海蠃に汐さす磯の夕かな
季語: 強海蠃 (autumn)
【現代語訳】岩礁に残された強海蠃に夕潮が満ちてくる、秋の浜辺の夕暮れであることよ。 【鑑賞】秋の寂寥とした海辺の夕景を詠んだ句です。固い殻を閉ざして波打ち際にじっと佇む強海蠃と、静かに満ちてくる冷たい夕潮の取り合わせが、秋の哀愁を静かに引き立てています。
鳴竿の音ばかりして秋の暮
季語: 鳴竿 (autumn)
【現代語訳】人気のない夕暮れの田に、鳴竿の乾いた音だけが響いて、秋の日が暮れていく。【鑑賞】夕暮れ時の広大な田園に、鳥を追う鳴竿の音だけが空虚に響き渡っています。視覚的な薄暗さと聴覚的な乾いた響きを取り合わせることで、秋の暮れの寂寥感と澄んだ大気を見事に描き出しています。
伏見祭十日の月の出でにけり
季語: 伏見祭 (autumn)
【現代語訳】伏見祭で賑わう今宵、空には少し満ちてきた十日余りの月が昇ってきたことだ。【鑑賞】江戸中期の俳人・大島蓼太の句。御香宮神社の旧暦例祭の夜景を捉えています。地上では町衆が花傘を揺らし熱狂するなか、見上げれば秋の澄んだ空に十日の月が静かに照り輝いています。祭りの動の賑わいと、天上の月の静の美しさが見事に調和した、風情ある一句です。